2006.05.16
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パソコンで学ぶ、地震対策~インテルのPCスクール

パソコンで学ぶ、地震対策~インテルのPCスクール

IT社会で育つ子どもたちに必要なスキルは、もはやパソコンの使い方ではない。パソコンやインターネットを使いながら、新しい世界を発見し、実社会とも結びつきのある活用術を身につける。そんなスキルを楽しみながら学んで欲しいとインテル株式会社は、毎年、春夏2回の小学生向けPCスクールを開催している。3月28日、同社東京本社にて開催された今年の春のPCスクール「パソコンで学ぶ、地震対策」の様子をご紹介する。

 

 半導体大手メーカであるインテルは、社会教育活動として長期にわたり、インテル教育支援プログラムを世界規模で行なっている。日本でも政府機関、教育関係者と関係を持ちながら教員支援、科学教育支援などを独自のプログラムで行なう。1999年に開始されたPCスクールもその一環である。

 同PCスクールは、関東近県の小学生4年~6年生を一般公募で集め、春休みや夏休みを丸1日使って開催される。プログラムの内容は、社内のスタッフにより数ヶ月前から検討され、これまでも子ども達の興味をひくトピックをたくさん取り上げてきた。今回のプログラムでは、地震の恐ろしさを知るだけでなく、災害時の対処法や日常生活での危険ポイントなどを探し、まとめ地図を作るまでの一連を習得できることを目的とした。
 


インテル(株) マーケティング本部本部長、阿部剛士氏


阿部氏の用いた小道具・・・パソコンチップ(左上)、半導体基盤(右)、クイズを盛り上げるサウンドマシン

驚きを与えたい!技術本部長が先生になる

 午前9時、東京、丸の内に集まった小学生は16人。自己紹介が終わるとさっそく、パソコンとインターネットについての講義が始まった。先生となるのは同社マーケティング本部本部長、阿部剛士氏。阿部氏は、最新の技術を追いかける技術部門のトップの立場でありながら、忙しい中、毎回ボランティアとしてPCスクールに参加している。

 「理科離れと言われて久しいが、技術はもっともっと成長していく分野であり、子どもたちにもその可能性を与えていきたい(阿部氏)」。

 また、インテルでは事前に社内から社員ボランティアを募り、今回も子ども2人にサポーターが1人付く形をとっている。

 「理科は触らないと判らないし、また子ども達にいい意味での驚きを与えたいと思っている。驚きの先にはさらなる探究心が芽生えるはず」

と話す阿部氏は、講義の内容も堅苦しいものにならないようにと、クイズ式などの工夫を施す。パソコンの中心部分は何でできているかな? といった質問を投げかけ、普段子どもたちが見ることのない半導体やその元となるシリコンの基盤を見せながら進めていく。コンピュータの頭脳のもとは実は石から出来ていると知って子どもたちは、驚いた様子だ。


 


防災教育・啓発コーディネーター 松尾知純氏

パソコンで地震体験?!

 午前10時、いよいよ本日のメインテーマとなる地震についての学習へ。阪神淡路大震災でのボランティア経験を持ち、現在は防災教育・啓発の研究、普及活動を行なっている松尾知純氏により、災害に対する知識や防災の必要性についての講義が開始された。学校や家庭でも参考になる防災への意識作りやパソコンを使った「危険ポイント地図」の作り方など松尾氏の講義内容を、順を追って紹介していく。
 

 

■自然災害を考える

 自然災害、神戸の地震の様子をビデオや写真で見ながら「災害って何だろう?」と問いかける。

「いつ起こるかわからない。みんなの問題なんだよ(松尾氏)」。

(1)災害時の写真を確認しながらどんなところがあぶないのか話し合う (2)液状化実験で地震のメカニズムを見る
(3)パソコンを使って地震のシミュレーションを行なう、インターネットを使って情報を見るなど。

 松尾氏は、地震についての予備知識を伝授した後、災害発生時、直後、避難生活時、復興の四段階に分けて、日頃からできることは何か、身につけておくべきことは何かを子ども達自身に問いかけ意見を述べさせた。

  参考サイト子ども防災e-ランド 
総務省消防庁による、こども向けの防災教育サイトで実験動画やアニメーションを使って楽しく学べる。

使用したフリーソフト
:「地震シミュレーション」
震源からの距離や規模を変化させたときの揺れ方の変化をシミュレートすることが可能。 
 
 
 

 

 

■災害時マップを作る

(1)予め地図を用意し確認を行なう
 

地図の横に、場所ごとに写真とポイント記入の欄を設けておく

(2)2人1組となって地震時に役立つ屋外のポイント、あるいは危険ポイントを探して、デジタルカメラで撮影していく。

実際に見て、考えて、撮影して、地図上にポイントの番号を振り説明を書いていく

(3)パソコンの画面にデジタル写真を挿入し説明を打ち込む

見やすくプリントアウトしたり、そのままプロジェテクターに映し出したりできる点はパソコンで作成するメリットでもある

(4)対処法、避難場所など自分達の言葉で発表する

「ガラス張りのビルが多くて地震になったら下にいると危ない」、「地下鉄の入り口がふさがったら出られなくなる」・・・子どもたちは、大人の気がつかない目線での様々な発見を発表した

災害時マップ作りについて、そのポイントを松尾氏に聞いた。

 
○街歩きの際に持ち歩く記入用の地図、整理や発表用の地図を用意する

○プレゼンテーションソフト(パワーポイント:
Microsoft Office のプレゼンテーション グラフィック プログラム)などであらかじめマップを作成する方法、または紙媒体でも構わない。

○紙の場合は、周囲に付箋などに書いたコメントや写真を貼っていく
 
 

今後につなげる防災街歩きを行う上でのポイント

 
○記入する数に自由度を持たせること。

○明確な誤りを除いてはポイントの正しさよりそこを選んだ理由を重視すること

○数の多い消火器・消火栓はシールやドットでの記載にとどめ、数の少ないポイントへの気づきを促すこと
 
 

地震を体験する

 危険ポイント探索後に子どもたちは、千代田区防災課の起震車で震度4から7の地震を疑似体験した。ただ映像で見るのと体験するのでは大違いの様子。始めの緩やかな揺れには笑顔だった子どもたちも、揺れが強くなるに連れて真剣な表情に・・・。(筆者も関東大震災レベルを体験しましたが、怖くて悲鳴も上げられませんでした。実際は立つことも何もできる状態ではありませんでした)

起震車体験

■身の回りにある防犯グッズを見直す

 身の回りのものを使っての「自分でできること講座」をクイズ形式で行う。防犯グッズにどんなものがあるか確認したり試してみたりする。

毛布の端をきつく丸めて担架代わりに
防災食を試食しながら、ネットでさっそく検索して値段を調べる子も!

命を大切に!それには普段の心がけが重要と子どもたちによびかける

 スクールの最後に松尾氏は

「学校にいる時や遊んでいる時、どんな時に地震があるかわからない。だからこそ自分で自分を守る備えをして欲しい。どこが危ない場所なのか、何が使えるものなのか。知っているだけで守れる命がたくさんある!」

と呼びかけた。

 終了後に、防災教育についての松尾氏の考えを尋ねたところ

 「誰かが守ってくれて当たり前の命や安全について、防災教育は自分のこととして考えさせる素材だと言えます。命のはかなさ、尊さを、自らの身に重ねて考えて気づいた時、彼らは他者の命の尊さも学び取ってくれるような気がします」

と答えてくれた。

 さて、今回のPCスクールは、もうお気づきのように、パソコン教室と言うよりも防災教室だったと言えよう。シミュレーションや情報収集など、使われたPCのツールとして役割は大きいものの、その影は薄い。本来、技術とはそんなものではないだろうか。子どもたちの様子を見ていると初めて触るソフトウェアだろうが未知のインターネットの世界だろうが、彼らは感覚で使いこなしていく。

 今なお、学校のパソコンルームが活用されていないといった話を聞くことがある。一方で今回の例のように大手企業が子どもたちに環境を提供している。企業と学校が連携すれば、様々な授業や生涯学習の一部にもっと気軽にパソコンやインターネットを活用できるのではないだろうか。

(ITジャーナリスト 遠竹智寿子)

参照ULR:

◆インテル株式会社 http://www.intel.co.jp/

◆防災教育チャレンジプラン実行委員会
http://www.bosai-study.net
委員会で実施・支援を行った学校などでの防災教育プログラムを整理し、学校などでの防災教育に役立つ情報を紹介している。実施形態(科目・総合・イベント等)や目的・ボリュームなどで授業・事業の絞込検索が可能。また、新たな防災教育事業を企画提案したい学校等の主体を、年1回公募により募集して、費用面等のサポートを行う支援事業も行っている。

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