2005.05.31
  • twitter
  • facebook
  • google+
  • はてなブックマーク
  • 印刷

最新の科学を身近に感じる 国立科学博物館新館を訪ねて

最新の科学を身近に感じる

「かはく」の略称でおなじみの国立科学博物館。昨年(平成16年)11月に新館が完成し、上野の新名所として多くの来館者が訪れている。学びの場.comの会員で、大妻女子大学の教授を退官され、現在は国立科学博物館で教育ボランティアをされている伊平保夫さんが、「かはく」の見所をご案内くださるというので、さっそくうかがった。

   取材当日は、企画展「恐竜博2005」が開催中とあって大変な賑わい。親子連れや、修学旅行、校外学習と思われる子どもたちも多く訪れていた。今年4月から小中高校生は、常設展のみなら入場料無料。これで一層博物館が身近になった。

 工事中の本館の横の機関車を横目に見ながら入り口を入り、ミュージアムショップを通り抜けると新館の入り口。新館は、地下3階から地上3階の6階建て。1フロアの天井高は最大7メートルとマンションの2階分もあり、とても広々とした空間だ。もちろんバリアフリー設計。

 新館の展示は、大人の鑑賞にも耐えうるものを目指したと言うだけあって、幼児や小学生が楽しめるコーナーも多数あるものの、高校生や大学生くらいでなければわからない展示が少なくない。

「大学で一般教養を学ぶ機会が少なくなった今、このような、生物、物理、化学、地学、などサイエンス全般を一望できる施設をぜひ学習の場として欲しい。学生でなくても、教養としてのサイエンスを身近に感じる場として利用してください。」と伊平さん。

「学校にも積極的に利用して欲しい。まずは、先生が来館して『かはく』を楽しんでください。かはくを使って、どのような授業を展開するかは、先生が相談できる『ティーチャーズセンター』があるのでこちらを積極的に利用してください」とのメッセージをいただいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ながーーーい牛の腸の標本

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


本物の零戦が間近に見られる!

 

■とっておきの見所は!?

●自然の仕組みをさぐる
 さて、さっそく地下3階の「宇宙・物質・法則」のフロアから案内していただく。モル、カンデラ、ケルビンなどの単位を体感できるコーナーは、子どもにも(超文系の私にも)楽しめるが、その奥はかなり高度。万有引力を証明する実験装置、光の速さを測定する装置など、大変貴重な、かつ有名な実験装置が多数展示されている(同行した商品企画担当&理系のTは感嘆していたが、私には何がスゴイのかさっぱり…)。

 最新の論文や、映像が紹介されているのも自慢だ。また、土・日・祝日に国立科学博物館の研究者が交代で、展示や研究内容などについての解説や質疑応答などを行う「ディスカバリートーク」が行われており、こちらも盛況。日進月歩のサイエンス事情をキャッチアップするいい機会だ。

●地球環境と生命の進化、地球上の生き物たち
 地下2階は「地球環境と生命の進化」のコーナー。巨大な爬虫類・哺乳類の標本(恐竜かと思ったら違うのだそうです)や、鉱石や化石の標本がズラリと並ぶ。特にアンモナイトの標本は充実しており、世界でもこれだけの数を集めたところはないそうだ。小さなものから直径1mくらいの巨大なものもある。4~5メートルはありそうな巨大な亀の標本も必見。地下1階には恐竜の標本が。とにかく巨大で圧倒される。恐竜はいつ地球上に登場したのか、子孫はいないのか?など恐竜についての最新の研究を音声で聞くこともできる。

 1階は現在でも見られる生き物の標本が、系統だてて展示されている。透明なアクリル樹脂で固められた標本は、オブジェのように美しい。


太古の地球にはこんな巨大な生物が存在していた!
(画像提供:国立科学博物館)

●身近な科学~科学技術の歩み
 2階には、「身近な科学」を体験できるたんけん広場がある。音、光、力、運動、電気、磁気などの現象を体感し、実験することができる。学生のボランティアが子どもたちの実験をサポートしてくれる。こちらも大変な賑わい。


体験コーナーは平日でも子どもたちで賑わっている
(画像提供:国立科学博物館)

 奥に行くと、日本の科学と技術の歴史が一望できるコーナーが。一番最初に目にとまるのは、精巧な和時計。ぜんまいにはくじらのひげが使われていて、1回巻くと200日間止まらない。その複雑な仕組みは現代の技術者をも驚嘆させるものだという。

 続く展示は、江戸時代の最先端技術。和算、天文、測量技術、本草学、解剖学、医学など、高度な技術がすでに培われていたことがわかる。世界と比較しても特徴的なのは、これらの研究の多くは町人によるものだということ。西欧では、学問は身分の高い人のためのものだったが、日本では身分に関係なく、広く門戸が開かれていたのである。

 近代のコーナーで印象的だったのは、零戦。ほぼ完全な形で展示されている。通常はジャングルなどに墜落して、修復不能なまでに壊れてしまうらしいが、展示されているものは海に墜落したために、ほとんど無傷だったという。オーストラリアで回収され、日本に返還されて、国立科学博物館に寄贈された。

●自然や生き物に触れる
 3階には、「発見の森」がある。雑木林の自然が再現されていて、自然の中に生きる動植物について知ることができる。ちょっとした探検気分も味わえ、子どもたちでにぎわっていた。


まるで本物の雑木林! この奥が「ティーチャーズセンター」。
(画像提供:国立科学博物館)

 その奥の「大地を駆ける生命」のコーナーは、動物の剥製が展示されており、115体もの剥製が、ガラス越しにこちらを見ている。動物の皮膚のしわ、血管の浮き出たようす、湿った鼻。今にも動きそうな迫力だ。展示されている剥製のうち84体は、海外の収集家から寄贈されたもの。すでに絶滅したもの、あるいは、捕獲が禁止されているものも少なくなく、大変貴重なものである。

 
ご案内くださった教育ボランティアの伊平さん

■教育ボランティアが博物館をより楽しいものにしてくれる

 ほかにもたくさんの展示があり、パンフレットには載っていないエピソードも交えながら伊平さんにご案内いただいた。国立科学博物館の収蔵物は全部で300万点にものぼるが(なんと、忠犬ハチ公の剥製もあるという!)、展示されているのはそのうちのわずか1万点あまり。それでも一日ではとても見て回れないほどのボリュームだ。しかも、ひとつひとつについて、詳しい解説が、タッチパネルで表示されている。同じものが、インターネット上でも公開されているから、事前学習は事後学習にも大変便利だ。

 今回実感したのは、一人で見るよりも、詳しいガイドの方に説明を受けながら見たほうが、ずっと展示を楽しめるということ。みなさんも、次回博物館を訪れる時には、ぜひ、会場にいるフロアガイドや教育ボランティアの方に一声かけてみて欲しい。今回お聞きしたような、とっておきの裏話も聞かせてもらえるかも知れない。博物館がもっと身近で楽しいものになること請け合いだ。

(取材・文:学びの場.com 高篠栄子)

国立科学博物館URL
http://www.kahaku.go.jp/ 


 

pagetop