2005.01.11
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新しいタイプの学校=コミュニティ・スクールとは何か

新しいタイプの学校=コミュニティ・スクールとは何か

従来、教育委員会や学校長が主体となってきた学校運営に、地域や保護者が一定の責任と権限を持って参画できるという、新しいタイプの学校、いわゆるコミュニティ・スクールの設立が、平成16年6月より、法的にも可能になった。それに先立つ平成14年度から、全国7地域9校が実践研究校に指定され、新たな試みを行ってきた。2004年11月29日、その実践研究成果発表会(文部科学省主催)が、国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。


会場となった国立オリンピック記念青少年総合センター」


中央教育審議会副会長 木村孟氏


約400名収容の会場は満席

 冒頭の基調講演で、中央教育審議会副会長の木村孟氏より、コミュニティスクールの定義、設置までの経緯などが説明された。簡単にまとめると、コミュニティ・スクールとは平成16年6月「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正されたことにより可能になった新しい公立学校の仕組みのことで、新たにコミュニティ・スクールという種類の学校を作るというのではない。教育委員会によって指定を受け、この"新たな仕組み"で運営される学校が、コミュニティ・スクールと呼ばれるのである。

 その新たな仕組みとは、教育委員会の判断により設置された、保護者・地域の人たちからなる「学校運営協議会」が、一定の責任と権限を持って学校運営に参画するというもの。具体的には、たとえば「学校運営協議会」は、学校運営や教育課程、人事について直接意見を言うことができる。校長は、教育課程の編成など学校運営の基本方針を作詞し、「学校運営協議会」の承認を得なければならない、など7つの項目が「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の中に定められている。

 メリットとしては、「学校運営協議会」を通じて、地域や保護者の意見を学校運営に反映させることができ、また地域の特性を活かした学校づくりが進み、地域全体の活性化にもつながることなどが挙げられる。

 さて、では実際にどのようにコミュニティ・スクールは運営されているのだろうか。各学校の発表を聞いてみよう。

 


千葉県習志野市立秋津小学校校長 佐々木幸雄氏


三重県津市立南が丘小学校校長 遠藤正芳氏


和歌山県新宮市立光洋中学校校長 塩見義則氏


岡山県岡山市立岡輝中学校校長 森谷正孝氏
 

■ 地域、保護者は学校にどう関わるのか

 研究指定校は、千葉県習志野市立秋津小学校、三重県津市立南が丘小学校、和歌山県新宮市立光洋中学校、岡山県岡山市立岡輝中学校、清輝小学校、岡南小学校、広島県尾道市立土堂小学校、京都府京都市立御所南小学校、東京都足立区立五反野小学校の9校。

 各校とも、まずは、「地域学校協議会」、「地域教育委員会」「コミュニティ」など呼称は地域によって微妙に異なるが、「学校運営協議会」を立ち上げる。メンバーは、推薦や公募などで選ばれた保護者と地域の方々だが、もともと地域にあった、児童会や地域団体やPTAなどの代表らが占めている場合が多い。

 「学校運営協議会」のメンバーたちは、月に1、2回集まって、活動方針などを協議する。実際に行われている活動としては、学校での学習や遊び、環境整備や安全にかかわる活動に、地域で公募したボランティアやゲスト講師が参画し、学校と地域が連携して子どもたちを育てること。これは地域人材の活用を促すことにもつながる。その他、広報紙を発行したりHPを開設して学校の情報を公開する、学校施設を地域の人に開放して、さまざまな講座などふれあいの場を設ける、などが行われていた。

 これらの活動を通じて、学校が開かれたものとなり、地域とのかかわりが増えた、子どもたちが大人と接する機会が増えた、と好評ではあるが、せっかくの取り組みが継続するためには、ゲスト講師への謝礼など、それなりに経費がかかる。秋津小学校以外の各学校では、地元商店会から寄付金を集める、保護者から会費を集める、など独自に資金調達の道を考えていた。光洋中学校では、学校内に自動販売機を設置する、学校の校章やマーク入りのTシャツを販売する、などの営利活動も行っている。最初は学校内での営利活動に反対の声もあったが次第に理解されるようになったという。


尾道市立土堂小学校校長 陰山英雄氏


京都府京都市立御所南小学校校長 村上美智子氏


東京都足立区立五反野小学校校長 三原徹氏

■ 学校裁量の拡大

 資金集めはともかく、地域やPTAが協力して、学校ボランティアをしたり、ゲスト講師をしたり、という活動は、コミュニティ・スクールでなくても実施している学校は少なくないだろう。しかし、普通の学校とコミュニティ・スクールとでは決定的に違う点がある。それは、「学校裁量権の拡大」。たとえば、文部科学省の定める指導要領の枠を超えた教育課程の編成であったり、教職員の公募(校長も含む)や、学校裁量で使用できる予算枠の拡大などである。

 教育課程については、たとえば、土堂小学校では「郷土科」「情報科」といった新しい科目を特設している。南が丘小学校では「英語科」を新設、また地域の人が講師を務める19教科の中から自由に選択できる「選択教科」を新設している。

 教職員の公募については、校長(学校)が欲しい人材像を公表し、公募するというケース、「学校運営協議会」が協議して公募するケースなどがあった。ご存知の方も多いと思うが、100ます計算でも知られる土堂小学校の陰山英男校長は、他校から公募によって同校の校長に、五反野小学校の三原徹校長は、民間企業から公募によって同校校長に就任している。五反野小学校では非常勤講師の公募で年齢制限の引き上げ、教員免除の不問を内容とする特別要綱を設置しての採用を行っている。
 

 予算については、前述の独自の資金調達のほか、土堂小学校では、現場のニーズに迅速に対応するため、年度途中での(つまり年初予算に組まれていない)教材の購入も可能とした。また、五反野小学校では、通常は年初に予算を組むと、ある科目のお金が余ってもそれを他の科目に流用できなかったのを「包括予算」の方針とし、科目間で流用できるようにした。

 

 

■平成17年度には70校が

 各校とも、これらの活動について、保護者や生徒、学校によっては地域や教育委員会も対象にアンケートをとり、学校の外部評価を行っている。その結果を受け、時代や地域の多様なニーズに応じた学校づくりを目指すのである。

 文部科学省では、将来的には47都道府県すべてにコミュニティ・スクールを設置する計画で、現在、全国70校で、コミュニティ・スクールの指定を受けることが検討されているという。こうした流れは、地方分権という時代背景も後押しし、一層加速されるだろう。閉鎖的、画一的、世間のニーズや時代の流れに合致していないと批判されつづけてきた公立学校が、コミュニティ・スクールという“新しい仕組み”本当に変われるのか。今後も興味深く見守りたい。


(取材・構成/学びの場.com 高篠栄子)


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