2004.06.02
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【エキスポ速報:第3日目】

【エキスポ速報:第3日目】

New Education Expo 2004 in 東京 3日目のリポートは、学びの場.comの人気コラム「はじめての公立小学校」でお馴染みの、寺田薫がお届けいたします!

 

 

 学校の教職員および教育関係者を対象に、8年前にスタートしたセミナー&展示会「New Education Expo」。年々規模を拡大し、いまや教育界が大注目するこのイベントも第9回目を迎え、本年も東京・大阪のニ都市で開催予定だが、大阪会場に先立ち、5月27日(木)~29日(土)の三日間、東京・臨海副都心『東京ファッションタウンビル』で行われた東京会場の模様を、のべ80以上のセミナーのなかから29日(土)の内容をピックアップしてリポートしたい。
 最終日ということもあり、また週末ということもあって、三日間の期間中、最もセミナー数の多かった29日(土)。セミナーは、ルームA~Iまでの9会場を使用し午前10時から午後5時45分まで、休憩をはさみながら各1~2時間の割りで行われた。

 


吉田研作氏

 

 

 

 

 

 

■日本の英語教育の現状と課題

 朝一番、10時からスタートした『日本の英語教育の現状と課題』は、上智大学外国語学部英語学科教授・吉田研作氏によるセミナー。文部科学省中央教育審議会外国語専門部会委員も務める同氏は、「英語が使える日本人」育成のための行動計画の第1研究リーダーでもあり、日本の英語教育の現状と今後の課題を、同じ材料を使用して行った韓国での調査結果とも比較しながら発表した。調査のメインテーマは、『教師の教え方と子どもたちの英語力との関係』。その調査の方法は、国内9600名と韓国の生徒を対象に、(1)英語のコミュニケーション能力テスト(GTEC)、(2)「英語を使ってあなたは何ができるか?」というCAN-DO調査、(3)受験英語力を測る進研模試の3つを、一方、その生徒たちを指導する同じ学校の教師に、英語教育に関する理念や教え方についてのアンケートを実施。それぞれをタイプに分けて比較検討した。その結果は、

1 思考力、伝達能力、構成展開などをきちんと指導していると、その生徒たちは授業外でも英語を使う・触れ合うことにポジティブ。 

2 これまで英語授業の中心とされてきた文法訳読の能力と英語コミュニケーション力に相関関係は無く、ときに負の相関すら生まれる。 

3 授業中、ただ教科書を読むだけでは生徒たちの英語力は上がらない。 

4  国外の学校で勉強(留学等)していくには、きちんとした読み書き(ベーシック英語)が重要。 

5 国外における社会的場面(レストランでの注文、買い物など)での英語活動は教師の理念、教え方のどちらとも相関は見られない

……など、真の英語力を身につける指導と、受験英語指導の壁が顕れる形になった。また日韓の生徒のCAN-DO比較では、ペーパーテストの結果レベルに関係なく韓国の生徒の方が「できる」気持ちが著しく強いとか。背景には、韓国の教科書は日本の3倍近い厚さと内容があり、生活のなかで英語を実践する機会が多いために、それが彼らの自信につながっているのではないかと推測する。

「文法訳読も大事だが、英語を使わせる機会をもっと豊富にすることが、子どもたちの真の英語力向上につながる」と吉田氏はまとめた。

 


金子郁容氏

■日本のコミュニティスクールとアメリカのNCLB法

 次に、「学校システムをめぐる改革の潮流 日本のコミュニティスクールとアメリカのNCLB法」では、いま注目を集めている公立小・中学校改革の要<コミュニティスクール>について、慶応義塾大学大学院政経・メディア研究科教授の金子郁容氏が報告・解説した。

 教育特区や、大学・大学院の株式会社化、NPOが作る学校など、受け手の多様なニーズに応えるべく教育現場の規制緩和が進むなか、来年4月スタート予定の「コミュニティスクール」は、長いあいだ文部科学省→県(都)教育委員会→地方教委→学校という大きな官僚システムの末端にあった公立校を、地域が主体となって校長とともに運営していくという新しい試み。

 これによって既存枠に囚われず地域の特色やニーズに合った柔軟で個性的な学校作りが可能になる一方、地域住民が参画する学校運営協議会は教員人事にも一定の権利を持つため、受け手側のアカウンタビリティも活かせるというのが大きな特徴だ。

「『学校は与えられるもの』という発想から『学校は地域で作るもの』に変われば、日本の公立校も希望が持てる」

と金子氏。教育改革国民会議委員としてコミュニティスクールを提唱してきた金子氏のもとには、自然のなかの全寮制学校をはじめすでに全国の地域から実現化に向けての企画・相談が相次いでいるという。

先進国アメリカでは2年前にNCLB(No Child Left Behind)法という、生徒の誰一人としておいてきぼりをくわないよう学校に義務を与える法律が施行された。これによって生徒の成果に学校がきちんと責任をとらなければならなくなったわけだ。そこまで進んではいないが、日本でも、これまで入口だけで評価されてきた学校が<成果>を求められる時代に入ったことは間違いないようだ。

 


二木立氏

 

 

ルーシー・タッカー女史

 

 

 

 

 

■世界標準の大学教育とは

 最後は、大学改革を主題にした「世界標準の大学教育とは 特色ある大学教育とは~COE・GPに採択された大学より」。

 文部科学省は「大学の構造改革の方針」(平成13年6月)に基づき、平成14年度から新規事業として研究拠点形成費補助金を措置した。「21世紀COEプログラム」と呼ばれるこの事業は、わが国の大学に世界的水準の拠点を形成することで創造的な人材育成と国際競争力のある個性的な大学作りを推進することを目的とし、一方「GP」は、同じく文部科学省が平成15年度にスタートした「特色ある大学教育支援プログラム」の略で、大学教育の特色ある取り組みを公表することで高等教育の活性化を促進・支援する試みだ。

 一人目の講演者は、昨年、「福祉社会開発の政策科学形成へのアジア拠点」の研究でCOEを、「学生とともに進める障害学生支援」でGPを、福祉系大学で唯一W採択された日本福祉大学の社会福祉学部長・COE拠点リーダーの二木立氏。愛知県の中規模・中堅大学である日本福祉大学がCOE採択された要因を「(1)90年以降、福祉重視・国際化・情報化という“時代の風”をつかんで行ってきた学部開設をはじめとする大学改革の実施、(2)縦割りだった研究科の垣根を取り払ったことで生まれた福祉をベースとした魅力的な研究テーマ、(3)学長をリーダーとした申請にあたっての組織的対応力」と分析する。

続いて講演したのは、「英語自立学習の新システム」でGPに採択された神田外語大学から自立学習支援センターSACLAのルーシー・タッカー女史だ。昨年3月、神田外語大学では、学生の能力や学習スタイルの個人差によって通常の授業では対応が難しかった実践的な英語運用能力を各々に合った形で向上させるべく、英国や香港のセルフ・ラーニングステーションをモデルにした自立学習支援センター「SACLA」を新設。防音のマルチ・パーパスルームや、洋書・洋雑誌コーナー、3人のラーニング・アドバイザーとフリーでコミュニケーションがとれるスペースなど、斬新なデザインかつ充実した内容の語学自習トータルセンターと学生たちの様子を映像とともに紹介した。


 学校改革はいま急激なスピードで進んでいる。しかも、これまでのような一筋ではなく細分化・多様化し、その突然の変化に追いつけない教育関係者も少なくないだろう。しかしひとつだけ明らかなことは、受身の教育は、この先、通用しない。「自分は何を教えられるのか?」教育改革とは、学校改革を入口とした教員自身を問う改革でもあるのだ。

(寺田薫)

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