2010.11.09
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15th New Education Expo in 東京 現地ルポ 21世紀にふさわしい「教育の情報化」を提案

15th New Education Expo in 東京 現地ルポ

「New Education Expo 2010 in 東京」(総務省、経済産業省後援)が9月22~24日、東京・有明の東京ファッションタウンで開催された。15回記念の節目を迎え、約100社の企業が参加。例年以上の多彩な展示や、セミナー・公開授業・ワークショップなどが展開された。

15th New Education Expo in 東京 現地ルポ 21世紀にふさわしい「教育の情報化」を提案

「New Education Expo 2010 in 東京」(総務省、経済産業省後援)が9月22~24日、東京・有明の東京ファッションタウンで開催された。15回記念の節目を迎え、約100社の企業が参加。デジタル教科書や電子黒板、クラウド・コンピューティング、ツイッターなど教育の最新トレンドをテーマに、機器・ソフトの展示、セミナー・公開授業・ワークショップなどが例年以上に多彩に展開された。とりわけクローズアップされたのが、「普通教室(授業)で役に立つ」という視点だ。政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が教育分野も含めた「新たな情報通信技術戦略」の工程表を策定し、文部科学省も先ごろ「教育の情報化ビジョン(骨子)」をまとめるなど、情報化は機器整備の段階から、指導や校務に活かせる「21世紀にふさわしい学校教育の実現」に課題が移ってきている。そうした状況に対応して、誰にでも使いやすく、学力や作業効率の向上にも効果がある機器や実践の提案が相次いだ。

セミナー紹介

先進的な科学教育の取組み
~スーパーサイエンスハイスクールの実践事例より~

横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校理科主任・SSH担当 溝上 豊 氏
埼玉県立浦和第一女子高等学校教諭 伊藤 晋司 氏
私立清真学園高校(茨城)理科教諭・SSH担当 網敷 俊志 氏

ガラパゴスから研修中継も

 本セミナーでは、文科省から「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH)に指定されている3校から発表があった。

 横浜サイエンスフロンティア高校は、大学レベルの高度な教育環境はもとより、小柴昌俊東大特別栄誉教授(ノーベル物理学賞受賞)ら一級の科学者から薫陶を受けられるという「本物体験」(溝上教諭)が特色。SSH指定は1年目だが、今年8月のSSH全国大会のポスター発表特別賞を受賞するなど開校2年目で早くも成果を上げている。

先進的な科学教育の取組み~スーパーサイエンスハイスクールの実践事例より~
発表する伊藤教諭(右)と溝上教諭(中央)、網敷教諭(左)

 浦和第一女子高では完全希望者制により、1年生で「視野を広める」、2年生で「専門性を高める」「情報発信力」、3年生で「研究方法論」を身に付けさせるという段階的な指導で「国際社会で活躍できる女性科学者・技術者」(伊藤教諭)の育成を目指している。

 清真学園は鹿島地域の人材育成を担う地方私立進学校として科学教育を推進。国内だけでなくエクアドル・ガラパゴス諸島で研修を行うのが同校SSHの目玉で、研修の模様はインターネットで学校に中継。網敷教諭は「地方の学校でも世界へ飛び出すチャンスをつくりたい」と強調した。

確かな学力を支える普通教室のICT環境
~玉川大学と内田洋行の共同研究の成果から~

玉川大学教職大学院教授 堀田 龍也 氏
横浜国立大学教育人間科学部准教授 野中 陽一 氏
富山大学人間発展科学部准教授 高橋 純 氏
内田洋行教育総合研究所研究推進課 梅香家 絢子 氏

「日本型」ICT環境を

 玉川大学と内田洋行教育総合研究所による共同研究「UTプロジェクト」の研究成果を基に報告があった。

確かな学力を支える普通教室のICT環境~玉川大学と内田洋行の共同研究の成果から~
立ち見が出るほど高い関心を集めたセミナー
(左より堀田教授、野中准教授、高橋准教授、梅香家氏)

 最初に、堀田教授が「どの教室にも黒板があり、子どもは一人一人いすに座っていて、一斉授業が中心、というのが日本の授業スタイルだ。日本型のICT教育環境を考えなければならない。教材を全部デジタルに置き換えなければならないと思うのはナンセンスであり、普通の教師がどう使えるかが重要だ」と注意を喚起した。

 続いて梅香家氏が、電子黒板の製品開発の歴史と特徴を発表。野中准教授は文科省調査なども参照しながら、「(機器の整備状況が)100%にならないと現場では使うようにならない。常設されていれば、活用頻度は上がる」と訴えた。高橋准教授は、現場でよく活用されているのは教材の拡大提示機能であり、そうした教師の指導を支援する観点が必要だとした。

 最後に堀田教授は「機器の整備には順番があり、電子黒板に行き着くまでにもプロセスが必要。普通の授業をよくするようなICT環境を導入しよう」と呼び掛けた。

豊かな心・確かな学力を育む学校経営
~校長先生による特色ある事例紹介~

札幌市立山の手南小学校校長 新保 元康 氏
山形県米沢市立第四中学校校長 金 俊次 氏
長崎県雲仙市立千々石中学校校長 江﨑 俊夫 氏

情報化も改革に寄与

 「主役は教師」と強調する新保校長は、安全安心、多忙化など課題が山積していた学校を、前々代の校長時代からPTA改革を手始めにして学校・家庭・地域が一体となって改善していった事例を報告。ICT活用も「子どもファースト」(新保校長)の業務改善に役立っているという。

豊かな心・確かな学力を育む学校経営~校長先生による特色ある事例紹介~
ユーモアを交えて参加者に語り掛ける金校長
(奥左=新保校長、奥右=江﨑校長)

 金校長は実例を基に、大なり小なり問題を抱える「普通の学校」をよくするためには、居場所と出番 → 意図的で丁寧な支援 → 認め励ます評価 → やる気……という「プラスのスパイラル」を機能させるべきだと提案。そのためには校長が情報を持つことが不可欠であり、ICTを学校経営に生かすことも必要だとした。

 江﨑校長は、1990年代から海外視察の成果などを踏まえて学校現場に必要なソフト開発を行ってきたことや、地域に開かれた学校リニューアルの事例を報告。「ICTをいかにうまく学校に取り入れるかが校長の役目。地域にオーラを放つ学校を作れば、(地域からも協力が)自然と学校に返ってくる」と述べた。

EXPO × 学びの場.com コラボ企画

パックン・マックンの笑撃的英語
~小学校外国語活動へのエール~

パックン・マックン

現場で役立つ英語実践法を笑いと共に披露

パックン・マックンの笑撃的英語~小学校外国語活動へのエール~

 本講演は、来春より本格導入される小学校英語を踏まえて、英語に親しむ、身近なものとして感じるための、お笑い芸人「パックン・マックン」によるトークショー。約30分間の英語ネタ漫才の後、これから現場の教員が児童生徒に英語を教える際に役立つ知識やノウハウを、笑いを交えながら真剣に教授。たとえば、Rの発音は小さい“う”を入れて「ライス(rice):コメ」、Lの場合は小さい“ん”を入れて「ライス(lice):シラミ」と発音すると上手くRとLを使い分けられる。また、「ここが変だよ、和製英語」と題し、「オートバイは“自動的サヨナラ”」、「アウトドアライフは“ホームレス”の意味」等の例を挙げ、日常に多く存在する和製英語を利用して、遊びながら教えるコツを披露。テレビ番組でお馴染みの「パックン英検」も行い、非常に有意義かつ盛況な90分間だった。

表現力がアップする写真講座
~写真家が貴方の一枚をアドバイス~

EYE WITNESS
写真家・ジャーナリスト 桃井 和馬氏
動物写真家 小原 玲氏
フォトジャーナリスト 野田 雅也氏
動物写真家 前川 貴行氏

教育活動で活かせる写真撮影法をプロが伝授

表現力がアップする写真講座~写真家が貴方の一枚をアドバイス~

 現役教員の方々が教育活動の中で撮影した写真を持ち寄り、それを「EYE WITNESS」に所属するプロの写真家たち4人が批評・助言するワークショップ。出品された写真はいずれも力作・秀作ばかりで、写真家たちからは「いい写真です。文句つけようがない」という感想が多く聞かれた。その他、「撮った写真で、人を幸せにすることが原点です」「スナップ写真は一番やさしいようで、実は難しい」「記録を目的とする写真の場合、冊子にした時のレイアウトを想定しながら撮るとよい」等の助言も。「教育つれづれ日誌」執筆者の鷺嶋優一教諭の家族レクリェーション活動の作品へは「会話がまるで漫画の吹き出しのように見えてくる」、菊池健一教諭のNIE活動の作品へは「子どもと話しながら撮ると、もっとよい表情が撮れる」といったコメント。参加者にとって有益で充実した講座となった。

展示ゾーン紹介

デジタル教科書 現場で使いやすい教材を提案
デジタル教科書コーナー

 文科省の「教育の情報化ビジョン(骨子)」では、指導者(教師)が電子黒板に提示できることはもとより、学習者(児童・生徒)のニーズに応えるだけでなく学習履歴も把握したり共有したりできるような「デジタル教科書」や、質の高い「デジタル教材」の収集・提供の必要性を提言しており、今後の開発や整備が急がれる分野だ。

 そうした状況を受けて「デジタル教科書コーナー」には教科書発行者8社が出展し、学力向上に寄与するとともに、現場の教師にも使い勝手がよいようなデジタル教科書を提案。参加者が多数詰め掛け、熱心に説明を受ける姿が相次いで見られるなど、関心の高まりをうかがわせた。

デジタル教科書・啓林館

《啓林館》
教科書を見開きで丸ごと提示し、ボタンはページの送り戻しと2段階の拡大という単純な機能が基本。動画も簡単に提示でき、「シンプルで使いやすい」(担当者)デジタル教科書を目指している

デジタル教科書・帝国書院

《帝国書院》
地図帳の該当ページをめくったり、指示された場所を探したりすることが苦手な子どもたちは、実は少なくない。教師が電子地図帳で提示すれば、簡単に見つけることができる。統計資料も一発でグラフ化


職員室 校務の悩み解決、情報管理も安全
インフィニテックの「A-LOCKYシリーズ」

 教員の多忙化を解消するためにも、職員室に一人1台のパソコン活用が喫緊の課題。学籍、出席、教育計画などが一括して管理できる内田洋行の「デジタル校務システム」や、一日の業務をサポートする教員向けポータルサイト「デジタル職員室」のコーナーには、デモンストレーションを体験する教員が引きも切らなかった。
 インフィニテックの「A-LOCKYシリーズ」はUSBに何重ものセキュリティーを掛けることで、自宅のパソコンで作業をしてもデータ漏えいの心配はないという。

UBL(図書館経営) ICタグによる快適な生涯学習環境作り
読書通帳整理機

 展示コーナーの一角には、どんな教室でも組み立てるだけでICTルームに早変わりする内田洋行の「スマートインフィル」によって"仮想図書室"が登場。ICタグを使って快適な生涯学習環境作りを目指した「ULiUS」を提案した。「読書通帳整理機」は貸し出しと返却の履歴が記帳でき、あたかも読書量を“貯金”したような気分に。実際、導入した自治体では競い合うように図書館に通う子が増えているという。

教育総合研究所・学びの場.com 教育現場に役立つ情報を発信
教育総合研究所・学びの場.com

 会場入口のすぐ近くには、内田洋行教育総合研究所(教総研)と学びの場.comのPRブースが設けられた。担当者の河野葵さんは「教総研は教育の情報化をはじめ、教育現場をいかによくするかの実践的な調査研究をしています。学びの場.comでは先生方の役に立つコンテンツを充実させ、学校現場を元気にしていきたいですね。ぜひ情報や悩みをお寄せください」と話している。

 

 

写真:言美歩/取材・文:渡辺敦司、学びの場.com宝子山真紀 
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