2016.08.24
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夏休み明けの時期に学級担任が配慮すると良い事

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

夏休みが終盤に差し掛かってきました。

もう始まっている学校もあるかもしれません。

 

充実した夏を過ごすことができたでしょうか。

昨今、教師を取り巻く状況は、厳しいものになりつつあります。

夏にも多くの研修や出張などがあります。

メリハリを付けて、時間のコントロールをしていくことが今の教師には求められています。

 

さて、今回は夏休み明けのこの時期に教員が心掛けると良いことについて書きたいと思います。

夏休み明けの時期は教員にとっては、一年の中でも最も細やかに配慮をしなくてはならない時期です。

文科省の統計によると、9月1日(多くの学校で二学期が始まっていた日)は、一年間の中で、最も子どもの自殺の多い日だそうです。

その前後の日も多く、他には4月の始め、5月の連休明けなども同様です。

「自殺」同様、「不登校」についても、この時期に始まることが多いとされています。

夏休みの割合ゆったりとした時間の使い方からばたばたとした学校の時間の使い方への転換での不適応です。

自殺や不登校の原因については、何か一つということではなく、いくつかの原因が絡みながら複合的に影響を与えていると思われます。

 

・夏休みのゆったりとした生活から抜け出せない。

・宿題が終わっていない。

・運動会などの学校行事をやりたくない。

・インターネットやゲームなどをやっていたい。

・給食が嫌だ。

・友達に仲間外れにされる。

 

上に挙げたことなどが重なり、絡まり、「学校に行きたくない」「死にたい」という発想につながると思われます。

 

このように統計的データで、夏休み明けのトラブル発生が指摘されているような状況で、果たして学校、教師はそれに向けて、しっかりと対応しているでしょうか。

教師は、夏休みに様々な研修や出張があります。

しかし、それらは夏休み明けの子ども達をスムーズに迎え入れるためのものではないことがほとんどです。

幅広い意味では子どものためになるようなものもあるのですが、現場から見ていると、そうではないと感じるものもたくさんあります。

また、夏休みが明けて新学期がスタートすると、学校は忙しい時期となります。

秋に運動会のある学校は、すぐに運動会の練習が始まります。

それに向けて、夏休み中、教師はあれこれ考えます。

そういった際、どうしても教師目線(教師主導)の発想になりがちです。

夏休みは、目の前に子どもがいません。

それなので、教師が何かのプランなどを立てる際、どうしても教師の思いが先走ってしまうようなことが起こりやすくなります。

子どもの実態と離れてしまうこともあります。

夏休み明けには、教師の思いの強くこもった活動が展開されます。

時間を掛けて考えたプランなので、その通りに子どもが動けないと教師はついかっとなり、大声を出してしまったりします。

そういったことに苦痛を感じる可能性のある子どももたくさんいます。

発達障害などと呼ばれる子ども達で、文科省の統計では、6.5%とされています。

30人学級には、2~3人存在するということになります。

そういった配慮を要する子どもは、新学期の環境変化に加え、勢いのある活動が始まることで、トラブルを起こしかねません。

 

そこで、私が提案したいものが「スロースタート」と「じっくりと作戦を練ること」です。

「スロースタート」については、読んで字の如くです。

新学期の始まりを敢えてゆっくりと始めていくのです。

不適応を起こしそうな子どもを「包み込む」ような感じのスタートです。

新学期には「提出物の管理」「新しい係や当番決め」「運動会に関係するもの」などばたばたとなりそうなものがたくさんあります。

そういったものの内、少しだけ先延ばしにできるものは、先延ばしにします。

先延ばしにできないものは、ばたばたとしないように取り組んでいきます。

ある本に子どもと教師の関係について、綱引きを例に書いてあるものがありました。

今の子どもは、教師がぐいぐいと綱を引っ張ってしまうと、「ぽいっ」と手を離してしまう子どもがある程度いるのだそうです。

「手を離した」という状態は、「不登校」などに当たるものでしょう。

しばらく前であれば、教師がぐいぐい綱を引っ張り、子どもを育てていくようなこともできたのだと思います。

しかし、様々なことへの配慮が求められる現代の学校においては、綱が緩まないように少しずつ引くことが求められているのだと思います。

それも綱を引く強さは、相手によって微妙に変えていく必要もあります。

そういったバランス感覚を持つことが、現代の教師には求められています。

 

「じっくりと作戦を練ること」は、残り少なくなった夏休みにしておくことです。

先に書いた「スロースタート」もそうですが、子どもが学校での生活にリズムを戻すことができるようにするための方策をいくつも考えておきます。

楽しみ(笑い)ながら取り組めるようなものだと最高です。

 

例えば、私のクラスでは、長期休業明けには、「昼寝をしない!」という宿題を出します。

それも連絡帳に赤字で書くようにしています。

子どもに「本当にそれが宿題ですか?」などと言われながらも、黒板に書きます。

生活のリズムを整えることは、新学期が始まった時の大きな課題の一つです。

どうしてもテレビやゲーム、携帯などの影響で、「遅寝遅起き」の生活になりがちです。

学校が始まってからの数日に「生活リズムを取り戻すこと」を強く意識させ、それを実行させていくことで、スムーズな新学期の始まりになる可能性が高くなります。

 

また、「夏休みクイズ」も行う予定です。

まず、それぞれの子どもに夏休みに印象深かったことを考えさせます。

例えば、「大阪に行き、本場のたこ焼きを食べた。」だとします。

その子どもに黒板の前に立ってもらいます。

その後、他の子どもが色々と質問をしていきます。

「それは、どこか遠く、例えば、埼玉県の外へ行ったものですか?」「はい。」

「それは、飛行機で行きましたか?」「いいえ。」

「その場所のおいしい食べ物は何ですか?」「たこ焼きです。」

こんなやりとりをしながら、その子どもが夏休みに印象深かったことを探っていきます。

学年などによって質問の数や方法を変えると良いと思います。

どこかで区切りを付け、想像した答えを周りの子どもが言います。

その後、前に出ている子どもに正解か不正解かを言ってもらい、少し感想などを加えてもらいます。

順番にこういったことをやっていくと、お互いの夏休みの様子が何となく見えてきます。

ここで配慮しなければならないことは、どこにも行っていないような子どももいるはずなので、どこかへ行ったというようなものではないもの(例えば、庭でとてもきれいな石を見つけた。)を教師が紹介するということです。

こうすることで、発表を嫌がる子どもを減らすことができます。

このゲームは、アレンジを変えて、スリーヒントクイズで行うこともできます。

先ほどの大阪の例では、前に出た人が「たこ焼き」「東海道新幹線」「真田丸」などのヒントを3つ言います。

他の人は、その3つのヒントを元に、答えを考えるというものです。

この「夏休みクイズ」は、ゆったりとしており、互いの夏休みの様子が分かり、その上、子ども同士のコミュニケーションを促すこともできます。

お勧めです。

 

このようなネタがたくさんあります。

教育雑誌などを読むのも良いです。

こういった時代ですから、ネットワーク上には非常にたくさんの良質な実践がアップされています。

自分の学級の状況や自分自身のキャラクターなどを考え、やることを考えてみると良いと思います。

二学期は、一年間の中で最も長い学期です。

様々な行事も控えています。

そのスタートを順調に切ることができるようにするために作戦を練ってください。

良いスタートが切れることを祈っています。

 

 

 

以前書いた関連する文章を載せておきます。

興味のある方はお読みください。

夏休み明けに担任が配慮すると良いこと

慌ただしい時期に学級担任として心がけていること

 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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