2015.12.01
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幼児に「赤ちゃんはどこから来るの」と聞かれたら?

第79回目のテーマは「幼稚園児に『赤ちゃんはどこから生まれてくるの?』と聞かれました。どう答えるべきでしょうか?」です。

どうする? 幼児への性教育

幼稚園児の我が子に「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」と聞かれたお母さん。とっさのことで、どう答えればよいか迷ってしまい、適当に受け流したそうです。「あとで考えたら、特に隠すこともなかったなと思いましたが、こんな時、どう伝えるのがよいでしょうか?」という相談が来ました。

本連載では、小学生中学生への性教育についてはお話ししてきましたが、幼児についてはまだでしたので、今月はこの年代の子どもに先のような質問をされた場合、どう対応すべきかを考えます。

誕生にまつわるトリビアを入れ、わかりやすい言葉で

子どもは好奇心の塊。色々なことを知りたがります。ですから、お母さんがきょうだいを妊娠すると、赤ちゃんがどこから生まれてくるのだろう、という疑問を持つのも自然なことでしょう。そういう質問を受けたら、「女の人には、足と足の間に赤ちゃんの出口があってね、お腹の中で大きく育った赤ちゃんが“もう出たいな”と思うと、出口に通じるトンネルの中をくるくる回りながら降りてきて、生まれてくるのよ」というように、わかりやすい言葉を使って教えてはどうでしょう。

同時に、生まれてきた後のことも教えてあげては? 例えば、「赤ちゃんはね、お腹の中では羊水という水の中で生きているのだけれど、生まれてきたらオギャアと泣いて空気を吸ったり吐いたりできるようになるの。すごいよね」とか、「誰も教えていないのに、自分一人でお母さんのおっぱいを探して、吸うことができるのよ」といった自然の神秘の話や、「赤ちゃんのうんちはね、おっぱいを飲んでいる間は臭くないの。だけど、離乳食を食べ始めると、臭くなるのよ~」という子どもが喜びそうな笑える話など、色々なトリビアを話してあげるのです。すると、子どもは夢中になって話を聞いてくれるでしょう。

その中で、「あなたが生まれてきた時はね……」と、その子が生まれた日の様子も話し、どれだけ皆が待ち望んでいたかを伝えるとよいでしょう。これは、その子に自己肯定感を持たせるきっかけになると思います。赤ちゃんが生まれてくるってすごいことなのだ、自分もそうやって生まれてきたのだと、子ども自身が喜びや誇りを感じられるような話をしてあげたいものです。

発達段階に応じた、タイミングよい伝え方を

子どもは、2歳くらいになると自己と他者の区別がつくようになります。そして、3~5歳の頃は親以外の他者と集団で生活することで、家庭とは違う社会での生き方を探っていくようになります。この時期には、集団の中で生活していくための社会的な常識やマナー、ルール等をしっかり教える必要があるでしょう。

ですから、この年頃の子の「赤ちゃんはどこから生まれるか」という質問に対しては、適当に受け流したり、隠したりせず、その子にわかりやすい言葉できちんと伝えて下さい。それにより、性を必要以上にタブー視しない態度を育む土台になると思います。また、誕生の貴さや素晴らしさを理解できれば、集団生活の中で「○○ちゃんも自分と同じように、生まれるまでは大変だったのかな」「□□君も、お母さんやお父さんが待ちに待った、大切な子どもなのかな」と想像できるようになるかもしれません。このような想像力は、友達を大切にしようという気持ちにつながるでしょう。

赤ちゃんの誕生について親子で話すことにより、子どもの自己肯定感が高まり、自分はもちろん、他者もかけがえのない存在なのだと気づくことができる。幼児期の性教育はこのように進めてはいかがでしょうか。

9歳くらいになれば、ホルモンによって心身が変化することを話してあげるとよいでしょう。本人が思春期の成長について事前に心積もりできていれば、その時になって驚いたり戸惑ったりすることも少なくなると思います。

性教育というと構えてしまう親御さんもいるかもしれません。しかし、親がポジティブ思考で、幼児の頃は「生まれてくることの素晴らしさ」を、9歳の頃は「ホルモンによる身体の変化や不思議さ」を伝えることで、子どもも性について「何か嫌なこと、隠さなくてはいけないこと」といったネガティブな捉え方をせずに、段々大人になっていくことの素晴らしさを前向きに感じ取れるようになるのではないでしょうか。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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