2015.09.01
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子どもが「動物を飼いたい」と言い出した。どうする?

第76回目のテーマは「子どもが『動物を飼いたい』と言い出しました。世話や死別したときのことを考えると、どうすべきか迷います」です。

子どもが「動物を飼いたい」と言い出した

幼い子どもに「動物を飼いたい!」と言われ、どうすべきか悩む保護者の声を聞くことがあります。子どもは「絶対にお世話するから!」と言いますが、「結局、大人が世話をすることになるのでは……」という懸念や、「動物が死んだときは、子どもにどう対処すればよいだろう」など、心配事は尽きません。

今月は、家庭で動物を飼うことについて、飼う・飼わないは何を基準に決めるべきか、また、動物を飼うことの教育的意味について考えてみます。

子どもの興味が本気かどうかを見極める

私は、家庭で動物を飼うことには大賛成です。動物を飼うことで、生きる、死ぬ、生まれる、時には逃げ出すなど様々な出来事を、子どもは見たり遭遇したりすることができます。その中で、楽しい触れ合いだけでなく、生命の神秘や貴さ、そして人力ではどうにもできない不可抗力が、自然界にはあることを実感できるからです。

では、飼う・飼わないは何を基準に決めるべきでしょうか?

まずは子どもをよく見て、本当に興味のある動物を飼いたいと言っているかどうかを見極めましょう。本当に興味のある動物を飼えば、子ども自身が最後まで責任を持って世話をするようになるはずです。動物園等に行って本物を観察したり、生き物紀行系の映画やテレビを見たり、図鑑やインターネットで生態を調べたりと、子どもに色々やらせてみて、それらの様子から子どもが「飼いたい」と言っている動物への興味はどの程度なのか、推し量ります。子どもの動物への熱意が伝わってきたら、飼ってみてはいかがでしょうか。

一方、「友だちの○○ちゃんが飼っているから私も」とか、「テレビに出てくるあの犬がかわいいから私も」程度の理由で飼いたいと言っていることがわかれば、飼わない方がよいと思います。生き物にさほど興味があるわけではないでしょう。飼ったとしても、恐らくすぐに興味がなくなり、結局大人が世話をすることになりそうです。

昆虫などの小さな生物から飼ってみる

飼うにしても、最初から犬や猫というのはかなりハードルが高いと思います。幼い子どもにはゴハンや散歩、排せつの世話は難しいでしょう。大人もこれらの飼育経験が無ければ、子どものフォローを十分できないかもしれません。このような場合は、昆虫などの小さな生き物から飼ってみるのはどうでしょう。

我が家の長男が最初に飼ったのは、海から連れ帰った小さなカニ。それは大事に世話をし、最後は卵を産んで死にました。全身の力を振り絞って産卵する姿に、親子で感動したことをよく覚えています。このように、普段の散歩中に何分でも座り込んで観察しているような生物、例えばカタツムリなどを家に連れ帰って飼うのも良いと思います。庭の夏ミカンの木にいたモンシロチョウの幼虫を羽化するまで飼ったこともあります。

どの動物も、子ども達が本当に興味を持って飼い始めたものなので、世話もすべて彼らがやっていました。興味があるからいつも観察しているのです。「たくさん食べたから、たくさんウンチをしたよ!」とか、「少し元気がないけど、どうしたのだろう?」など、ちょっとした変化にもすぐ気がつき、動物病院なども自分達で探していました。

小さな生き物であっても、命を預かるという責任の大きさは変わりませんし、動物を飼うとはどういうことかを経験できるでしょう。その上で、さらに犬や猫を飼いたいとなった場合は、検討してみてもよいと思います。

動物を飼うとハプニングはつきものです。我が家ではカタツムリやイモリが虫かごや水槽から脱走したことがありました。家族全員大慌てで探して何とか見つけました。その経験から水槽の上に網を張ってはどうかと、子ども達が話し合って実行していました。動物が死んだときはお葬式をしてお別れし、庭に埋めていました。

このようなハプニングや悲しい出来事の経験は、世の中はすべて自分の思い通りにはならない、動物は自分が楽しむためだけのものではない、むしろ人間の犠牲になってここにいてくれるのだということを知る、貴重な機会となるでしょう。また、動物について泣いたり笑ったり、自慢したり、まるで子育てと同じような経験を子ども自身ができるのは、動物を飼うことの魅力だと思います。もしお子さんが本当に興味を持っているのであれば、ぜひ動物を飼って、たくさんの経験を親子で共有できたらよいですね。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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