2014.07.21
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「子どもの貧困」と「教員の多忙」

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

1学期が終わろうとしていますが、気になるニュースが入ってきました。

一つは「子どもの貧困とその対策や支援について」です。

もう一つは、「教員の多忙について」です。

子どもの貧困問題については、本サイト内の「アグネスの教育アドバイス:子どもの貧困、どう支援する? 」(2013年9月4日 )の記事で、2013年時点での状況に対して、アグネスさんが様々な実態と要因を分析・考察し、食に関しての支援を充実させることを対策の第一歩と提案しています。


今年厚生労働省は7月15日に、「2013年国民生活基礎調査」の結果を発表し
ました。それによると、17歳以下の子どもの貧困率は2012年時点で16.3%と
なり、過去最悪を更新したとのことです。前回調査の2009年時点から0.6ポ
イント悪化し、改善の糸口がみえていません。

(マイナビニュース7月16日13時9分配信参照)

また、母子世帯は10年と比べ約11万世帯増え、母子世帯で働いているお母さ
んの4割以上が非正規従業員だそうです。大人1人で子どもを育てている世帯
の人の貧困率は54・6%に跳ね上がり、経済的な困窮は深刻になっています。
母子世帯で生活が「苦しい」と答えた人は80%を超えたそうです。

(沖縄タイムス7月17日(木)5時30分配信参照)
 

「自己責任論を前面に押し出して親や家庭に過度な負担を負わせるのは、問
題解決を遅らせ、事態を深刻化させるだけである。現金給付など生活苦を和
らげる具体的な施策が必要だ。(同掲参照)」と主張しています。
 

 個人的には、「現金給付」が妥当かどうかについては疑問があります。何ら
かの具体的な施策が早急に必要である現実に直面していることは確かである
と認識しています。一時的な現金給付でなく、社会の仕組みが徐々にでも改
善に向かうような方向にお金(税金)が使われるように知恵を出してしてい
ただきたいと願っています。
 

 疲れた身体に栄養ドリンクを飲んで一時的に元気にすることも必要な場合が
あるでしょう。でも疲れる根本の問題を解消していくことなしに、ドリンク
剤を飲み続けるのはいかがでしょうか。例えが相応しくないかもしれません
が、よく似たことではないかと思います。「子どもの貧困問題」は、根っこ
の部分の様々な要因(親の収入減、リストラなどの雇用問題、1人親などの
家族問題、地域や身内の支援問題等)が複雑に絡み合っているようです。近
く閣議決定する大綱を注視し、例え大綱が出てからでも、世論の力でより良
い意見が吸い上げられるようでありたいものです。

教師の多忙については、本サイトで斎藤剛史が「教員の負担軽減に文
科省が乗り出す ~これで多忙化は解消できるか? 」(2009年10月24日)

で触れています。かなり前から話題になっているのですが、現状は一向に良
い方向を向いていません。それどころか諸施策の嵐は逆行に向かっていると
言えないでしょうか。
 

 私は、「教員の業務を縮小方針…都教委、月内にも検討委」(The Yomiuri
Shimbun 2014年07月10日 18時34分配信)の動きが全国の教育委員会にも広
がらないかと期待しています。また各紙で6月下旬に「日本の先生、勤務時
間は世界最長 授業外で多忙、一方で低い自己評価」が紹介されました。

しかし、一体教職員以外の方々はこの記事をどのように受け止めているのでし
ょうか不安です。教育関係者以外の方のこのような記事へのコメントを読む
と、必ずしも教師の仕事内容を好意的に理解しているとは思われないものが
多くあります。かなり厳しい見方をされている方が実際は多いことに少々残
念に感じます。教育関係者と他の方々との仕事量の議論では、温度差が非常
に大きいことに認識を新たにします。私たち教育関係者が、新聞等のマスコ
ミ報道以外にも正しい実態をもっともっと積極的に伝えるべきではないかと
感じます。
 

私は、小中高など校種によって一概に言えないかも知れませんが、「持ち時
間数の軽減」に向けて文部科学省が指針を出していただくことも、教師の多
忙解消に手がかりとなるのではないかと思っています。経験年数や教科の特
性や校務分掌や学校規模等幾つかの要素があって一定の基準を出すのは難し
いかもしれませんが、経験上1週間の持ち時間が○○時間内であればと思い
ます。○○のところは、皆さんはどうお考えになるでしょうか。
 

 富山県内でも土曜授業が始まった地域があります。高等学校全日制では試
行という名の下に土曜日に生徒が登校することもはじまりました。「学力向
上、保障」という観点から見れば、決して悪いことではないかもしれません
。しかし、「教員の多忙」という観点からすると諸手を上げて賛同できるこ
とではないような感じがします。このように一つの施策や取り組みが、幾つ
かの観点から見ると背反するようなことが教育の現場では多くあるように思
えます。いや教育の現場というよりは、世の中でごく普通に起きていること
なのかもしれませんね。
 

 NHKの「モタさんの“言葉”」という番組でも視聴しながら(「NHK
どーがステーション」というサイトで既に放送された分も視聴できます)、
夏季休業中は心の洗濯をしようかと計画しています。皆さんの夏休みが実り
多いものになることを願っております。

追伸:前回でぺちゃくちゃの取り組みを紹介しました。百聞は一見にしかず
ですが、youtubeの動画サイトもあります。

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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