2014.07.01
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子育て中のイライラ、どうする?

第62回目のテーマは「子育て中のイライラ、どうすれば解消できるでしょうか?」です。

イライラの原因は、実は子ども以外のこと

子育て中、親御さんがイライラすることは少なくありません。何度いたずらを注意してもやめない、食事のマナーを教えようとすると「放っておいてよ」と逆切れされる、祖父母にばかりなつき「ママなんて、大っ嫌い!」と暴言を吐かれる等々、シーンは色々です。本当はイライラせず、笑顔で楽しく子育てしたいのに……。どうすればよいでしょう。

そもそも、なぜイライラするのでしょうか? 実は、イライラの原因は、大抵の場合、子どもにはないということを忘れてはいけないと思います。では何が原因かと言えば、寝不足、疲労、配偶者や舅・姑等との人間関係、ご近所とのトラブル、仕事の懸案事項、家計の不安……など、子どもとは直接関係のないストレスをため込んでいるせいでしょう。思い当たりませんか? このようなストレスの土台があると、子どもがぐずったり、言うことを聞かなかったりしたときに、イライラのスイッチがオンになり、爆発してしまうのです。

また、特にイライラする人が子育て中の親とは限りません。子どものいない人や、子育てを終えた年配の人もイライラします。例えば、街中でちょっとぶつかっただけで猛烈に怒る人。彼らは何か大変なストレスを抱えていて、それが人とぶつかったことでスイッチがオンになり、激怒するのでしょう。つまり、「子育てをしているからイライラするのだ」というのは、多くは思い込みなのです。

イライラしながらの子育て、子どもへの影響は?

では、イライラすることで子どもへの影響はないのでしょうか? 親からしょっちゅう怒られたり、きつい言葉をぶつけられたりする子どもは「自分が悪いからだ」と思うため、なるべく怒りに触れないよう親を避けるようになるでしょう。あるいは逆に、良く思われようと、親に媚びるようにもなるでしょう。こういう子は外でも権力ある人には媚びて、自分の意見を出せないようになるかもしれません。また、イライラして子どもを無視していると、その子は親の注意を引こうと、わざと悪いことをするようにもなるでしょう。さらに、いつもイライラした親に否定され追いつめられた子どもは、行き場がなくなり自分を肯定してくれる場所を探すようになるでしょう。子どもが出会い系サイト等にアクセスする原因も、「自分を認めてくれる人に会いたい」という場合が多いのです。このように、子育て中のイライラは子どもに何も良い影響を与えないと思います。

もちろん、子どもが悪いことをしたら叱ることは大事。でもその時には、どのような行動が悪かったか、その行動をとることによって何が引き起こされたかをきちんと伝えましょう。イライラして感情に任せ、暴言を浴びせるようなことだけはやめてください。子どもの心には何も入りませんし、ただ萎縮させるだけだと思います。

イライラの原因は子どもではないことを冷静に見極め、「お母さんがイライラするのは、この部屋がこんなに散らかっているからなのよ」と正直に話せば、子どもは自分が原因でないとわかり、むしろ片づけを手伝ってくれるのではないでしょうか。

ストレスを取り除き、イライラ解消!

では、どうすればイライラしない日々を送れるでしょうか? まず、暮らしの中で何がストレスになっているかを考え、そのストレスを一つひとつ取り除く努力をしてみましょう。例えば、寝不足。子育て中、特に夜の授乳が必要な時期は、母親は慢性的に寝不足状態で、イライラのスイッチも入りやすいものです。そういうときは、子どもが寝ている間に家事をしようとは考えずに、割り切って母親も一緒に寝てしまうことをお勧めします。

また、女性は自分の身だしなみに気を使いたいもの。出産前は毎月美容院へ行っていたのに、それができないことがストレスになっていると気づいたら、子どもを預けるか、一緒に連れて行ける美容院を探して、髪や爪などを美しく整えてください。

家計が苦しいことが悩みの中心であれば、食品以外の買い物はフリーマーケットやバザーだけにすると決めてみてはどうでしょうか。

ところで、日本人には「理想の母親像」というイメージを持つ人が多いように感じます。子どものため、夫のためにひたすら尽くす母親が最も理想的で、母親自身も「子育て中だから、子どものことが優先で、自分のことは後にすべき」という考え方を持っているようです。その理想像が子育て中の母親を追いつめてしまうことがあると思います。

それによりストレスがたまってイライラしては、子どものためになりません。ハッピーな親の下で育つ子どもが一番幸せでしょう。母親をはじめ家族の笑顔は子どもにとって一生のビタミン、心の栄養になると思います。どうか、イライラの根本原因は子どもにはないということを念頭に置き、ストレス解消に努め、笑顔になれる方法を考えてみてください。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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