悪い言葉遣いは人を傷つける武器にもなる

 文化庁の2007(平成19)年度「国語に関する世論調査」では、「中高生の言葉遣いは乱れている」と約8割の人が感じているという結果が出ています。若者の言葉の乱れはいつの時代も気になるものです。

 私自身は「超カワイイ!」といった、いわゆる“ギャル語”と呼ばれる流行語は、若者同士のコミュニケーションを円滑にするものとして遣う分には特に問題ないと思っています。若さゆえ、親世代とは違う新しい共通言語を持ちたいという心理はわかります。

 一方、同じ流行語でも「マジ、ムカつく」「ウザイ」「キモイ」「死ね」のような、人をののしる言葉は許せません。これらの言葉は、使うほうは軽い気持ちで発しても、浴びせられたほうは自分の人格や存在、可能性を否定されたと受け取り、心に深いダメージを与えます。人を傷つける武器、まさに“言葉の暴力”です。

 言葉の暴力は、場合によっては身体的な暴力よりも大きな痛みを相手に与えることがあるのです。

悪い言葉を遣う子どもの心理とは

 心理学では、自尊心が低くて自己評価の低い子ほど、乱暴な言葉を遣う傾向があるというのが定説です。自分より弱い立場の人に向かって悪い言葉を遣うことで、一瞬の優越感を得ているのです。

 そういった悪い言葉を遣う子には、それが人を傷つける武器になることを説明し、「今のままで十分にあなたは素晴らしい子なのだから、そんな言葉を遣う必要はないでしょ」と、繰り返し教えてあげてください。子ども自身がだんだん自分を肯定し、自己評価を高めていけば、悪い言葉も遣わなくなるはずです。

 子どもというのは、どこまで悪いことをやったら怒られるか、ギリギリまでやってみて大人を試す傾向があります。このため、悪い言葉を遣った時は、すぐにその場で「絶対に言ってはいけない」と厳しく注意する必要があります。もし遠慮をして甘い対応をすると、その子の将来にまで悪影響を及ぼしかねません。

アグネスの教育アドバイス

 以前、ある空港で私は20歳くらいの娘さんが母親に向かって「ウザイ、死ね!」と言っているのを見て、とてもショックを受けました。その母親が我が子にずっとそのような言葉遣いを許してきた結果でしょう。「大人になったら大丈夫」、「社会に出れば直る」と考えられがちですが、子どものうちに直しておかないと職場や改まった席などで、何かの拍子に自然と口から出てきてしまうものなのです。

大人も注意して、悪い言葉遣いを直す

 子どもに正しい言葉遣いを身につけさせるために、我が家ではさまざまな言葉ゲームをやりました。たとえば「ことわざ選手権」。これは、家族皆で知っていることわざを一つずつ言い合って、言えなくなった人が負けとなり抜けていくものです。なかなか勝負がつかず、次の日に持ち越されることもありました。英語でも、たとえばegalitarianismのような綴りの長い単語をより多く言って競うということをやりました。

 このようなゲームを通して言葉に興味を持つようになると、子どもの語彙にどんどんきれいな言葉が蓄積されていきます。特に小さい時からやるとよく覚えるので効果的です。

 また、冠婚葬祭などのかしこまった場に子どもを参加させ、「こういう所ではこのように言うのよ」とTPOに合わせた言葉遣いを教えることも有効です。子どもが望ましい言葉を遣えた時は目一杯褒めてあげましょう。すると、子どもは嬉しくなって正しい言葉をもっと覚えたがるようになります。

 私は我が子以外でも悪い言葉を遣っている子を見かけたらよく注意します。小さい子には、ちょっと泣く真似をしながら「そんなことを言っちゃだめ。おばちゃん、とっても傷ついたよ」と諭すように言います。

 言葉遣いはたまたま一度だけ注意されたからといって、すぐに直るものではありません。日頃から親はもちろん、学校の先生も子どもの言葉遣いには気をつけてあげてください。同時に、親や先生自身も自分の言葉遣いに責任を持ちましょう。大人が発する言葉は子どもにとって非常に重く、影響が大きいのです。

構成:後藤真/イラスト:あべゆきえ ※写真・イラストの無断使用を禁じます。