2014.10.14
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まいにち給食に牛乳がでるのはなぜ? 【食と健康】[小5・保健体育]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第九十八回目の単元は「まいにち給食に牛乳がでるのはなぜ?」です。

食育実践研究会がこのほど、子どもたちにとって身近な「牛乳」を活用した食育の授業プランと教材を、一般社団法人Jミルクで作成しました。単元は三つあり、それぞれの授業プランに基づいた模擬授業が武庫川女子大学の藤本ゼミによって行われました。今回は前回までの「牛乳が届くまで」「牛乳の変身」に続き、「牛乳の栄養」についての1時間の授業を紹介します。栄養と水分補給の点から飲料としての牛乳の特徴を知り、望ましい水分補給の方法について考える5年生保健体育の授業です。なお、今回の授業で使用したすべての資料・教材等は無料で一般社団法人JミルクのHPよりダウンロードできます。

給食に毎日出る牛乳について考える

授業はパワーポイントを使って給食の写真を見せることから始まります。
「おいしそう!」
「カレー食べたい!」
 と声が上がります。
「給食は好きですか?」
 と聞くと、
「大好き!」
 と返事が返ってきました。
「では、毎日給食に出るものは何だろうか?」
 との問いに、
「牛乳」
 との答え。牛乳が給食に毎日出ることに着目させ、牛乳の意味について考えることに興味を持たせることができました。
グラフを基に牛乳の栄養バランスの良さを説明

グラフを基に牛乳の栄養バランスの良さを説明

次に、
「給食に毎日、牛乳が出る意味を考えます。なぜでしょうか?」
 と聞くと、子どもたちからは、
「飲みやすいから」
「栄養があるから」
「骨を作るため」
「1本の牛乳が足りない栄養を補ってくれている」
「家で飲まないから」
 等々の意見が出ました。皆、牛乳が栄養豊富な食品であることは知っているようです。そこで、カレーを主菜とする給食メニューに牛乳を加えると、不足していた栄養素が補われ、メニュー全体の栄養バランスがよくなることを、グラフを基に説明しました。そして、
「牛乳を1本飲むことで、栄養バランスを整えることができるのです」
 とまとめました。

のどが渇いたとき飲むもの、その理由は?

「皆は、のどが渇いたときに何を飲みますか?」
 と聞くと、
「ジュース」
「お茶」
 等の声が上がりました。
「では、それらの飲み物を飲む理由を発表してください」
 と言うと、
「ジュースはおいしいから」
「麦茶は、ぐびぐび飲めるから」
「牛乳は家にあるから」
「ご飯やパンに合うからお茶がいい」
 等の意見が出てきました。
のどが渇いたときに何を飲むか、理由も考える

のどが渇いたときに何を飲むか、理由も考える

次に4種類の飲みもの(麦茶、スポーツドリンク、牛乳、オレンジジュース)を示して、
「この中から、のどが渇いていたらどれを飲みますか? 選んだ理由も併せて答えてください」
 と聞きます。子どもたちからは
「熱い日には汗をかきます。スポーツドリンクは塩分を補給できるからいい」
「オレンジジュースはおいしいから飲みます」
「お風呂上がりには牛乳を飲みます」
「後味がすっきりしているので麦茶を飲みます」
 という意見が出ました。

4種類の飲み物と、その特徴は?

ワークシートで飲み物とその特徴を考える

ワークシートで飲み物とその特徴を考える

子どもたちの発言を受けて、
「四つの飲み物について、栄養の点から考えることも大切ですね。ワークシートを使って、飲み物がどんな栄養を含んでいるかを表すグラフと、飲み物を線で結んでみましょう」
 と指示しました。

ワークシートによるにぎやかな活動の後、答え合わせをします。そして、栄養と水分補給の点からそれぞれの飲み物の良さに触れるようにします。答えは次の通りです。

  • 麦茶 ⇒ 香ばしい味と香り。ごくごく飲める。
  • 牛乳 ⇒ 栄養価が高い。水分は少なめ。
  • スポーツドリンク ⇒ 水分とミネラルを効率よく補給。飲み過ぎると糖分過多に。
  • 100%オレンジジュース ⇒ ビタミンCをたくさん含んでいる。飲み過ぎると糖分過多に。

上手な水分補給とはどんな方法?

最後に、上手な水分補給の方法について考えてみました。子どもたちに
「上手に選んで飲むだけでなく、飲み方を考えてみましょう」
 と問いかけると、
「一気飲みをしないでコップに入れて飲む」
「氷を入れて飲む」
「果物で水分をとる」
 等が話し合いを通じて出てきました。

そして、どんな栄養をとると良いのか、逆にあまりとりすぎると良くないのかを、その時々に自分で考え、判断して食べたり飲んだりすることが大切であること、飲んだ飲み物に含まれている砂糖の分だけ運動することも大切であることに触れて授業を終えました。

本授業は5年生の保健体育ですが、給食時間の5分間指導等、あらゆる場面で応用が可能です。また、子どもたちが日頃どんな飲み物を、どういう理由で飲んでいるか、その実態をつかむ良い機会となります。「牛乳が良い」という一面的なものでなく、他の飲み物と比較することで「牛乳の○○が良い」と気づき、自らの食生活について考えたり、興味・関心が広がることでしょう。

授業の展開例
  • 水分補給は熱中症対策としても重要です。熱中症対策に必要な水分補給の方法について調べてみましょう。
  • 牛乳の栄養素といえばカルシウムを思い浮かべる人が多いでしょう。カルシウムだけではありません。タンパク質、脂質などがバランスよく含まれています。牛乳には、どんな栄養素が含まれているか調べてみましょう。
関連情報
【本授業を動画で見られます】
「まいにち給食に牛乳がでるのはなぜ?」授業プラン

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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