2014.07.22
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牛乳が届くまで 【食と流通】[小3・社会科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第九十五回目の単元は「牛乳が届くまで」です。

食育実践研究会がこのほど、子どもたちにとって身近な「牛乳」を活用した食育の授業プランと教材を、一般社団法人Jミルクで作成しました。単元は三つあり、それぞれの授業プランに基づいた模擬授業が武庫川女子大学の藤本ゼミによって行われました。今回はそのうちの一つ、「牛乳が給食・食卓に届くまで」を紹介します。社会科3年「はたらく人とわたしたちのくらし」の中で、食事は多くの人々の努力があって作られることを知り、感謝の気持ちを持って食べることができる、“感謝の心を育てる”1時間の授業です。なお、今回の授業で使用したすべての資料・教材等は無料で一般社団法人JミルクのHP よりダウンロードできます。

6月1日は牛乳の日

紙芝居「6月1日は牛乳の日」を示す

紙芝居「6月1日は牛乳の日」を示す

最初に、紙芝居「6月1日は牛乳の日」を示して、世界中でお祝いされている「牛乳の日」という日があることを知らせた後、
「では、皆さんは普段、牛乳をどこで飲んでいますか?」
 と聞くことから始めます。子どもたちからは、「学校」「家」等の意見が出ました。
「では、皆さんが学校や家で牛乳を飲むとき、牧場から学校や家まで一体どんな人たちが働いていると思いますか?」
 と問います。すると、
「牛を飼っている人」
「牛乳を運ぶ人」
「牛乳から食べ物を作る人」
 という意見が出ました。

シルエットクイズ

続いて、紙芝居「この人、だぁれ?」を見せます。牛乳に関わる3 人(酪農家、牛乳工場の人、トラックの運転手)のシルエットを見せ、子どもたちにそれが誰で、どんな仕事をしている人か、推測させます。例えば、酪農家の場合は、
「大きな動物が見えますね。何かな?」
 と問うと、子どもたちは
「牛かも」
 と答えます。そして、
「人もいますね。どんな様子をしているかな?」
 と質問し、
「麦わら帽子を被っている」
「牛乳を入れる容器もある」
 と、子どもたちから答えのヒントを引き出しながら進めます。

同様に、指で何かを指しているシルエットから、製品を確認している「牛乳工場の人」。トラックで段ボールを運んでいるシルエットから「トラックの運転手」と推測し、最後に答え合わせをします。
「では答え合わせをしましょう。(1)番は『酪農家』といいます。牛の世話をして、毎朝早く起きて牛の乳を搾ってくれます。搾った牛の乳は『生乳』と言います」
「次は(2)番。全身をすっぽり包むような服を着ています。これは『牛乳工場で働く人』です。生乳を殺菌して、安全な形にしてから牛乳や乳製品を作る人です」
「(3)番の人は、牛乳を運ぶ『トラックの運転手さん』です。この人が運んでくれることで、家や学校で牛乳を飲むことができます。皆に牛乳をおいしく飲んでもらうために、たくさんの人たちが関わっているのですね」。

まだまだいる働く人

ワークシート 「牛乳はどうやって届くのかな?」

ワークシート 「牛乳はどうやって届くのかな?」

「さて、この人たち以外にも、牧場から私たちの所に牛乳を届けるために色々な人が働いていますね。例えば、学校で皆さんの給食の献立を考えたり、皆さんの身体のために必要な栄養のことを教えてくれたりして、これから大きくなる皆さんを応援してくれている人。そう、栄養教諭や栄養士の先生です。これらの人以外にも、まだまだ皆さんがまだ見つけていない人がいます」
 と言って、ワークシート「牛乳はどうやって届くのかな?」でシルエットになっている箇所を、皆で推測しながら答えを導きます。
ワークシートの答え合わせ

ワークシートの答え合わせ

答えが一通り揃った所で答え合わせをし、次のように説明を加えます。
「私たちが牛乳を飲むことができるのは、牛乳が酪農家から牛乳工場の人、運ぶ人、さらに牛乳販売店やスーパーを通して家や学校に届けられるからです。酪農家が『搾乳』して『タンクローリー』で運びます。搾りたての生乳は38℃で温かく、搾ったらすぐ5℃に冷やされて保存されます。これを5℃のまま工場に運ぶのがタンクローリーの運転手です。大切な生乳だから優しい運転で大事に、しかもなるべく早く運ぶようにしているそうです。牛乳工場では、安全に飲めるかどうかを厳しく検査する人、検査済みの牛乳を牛乳パックや牛乳びんに詰める人もいます」。

働く人たちの願いを知る

「私たちの手元に牛乳が届くまでには、たくさんの人が仕事をしていることはわかりました。でもまだ仕事の内容だけしかわかっていません。これからこの人たちはどんなことに気をつけ、何を願っているのか、班で相談してみてください。まず、酪農家の人は?」
 と、班ごとの話し合いを指示します。

話し合い後、子どもたちの発表からは
「愛情を込めて育てた牛のミルクだよと伝えたい」
「牛のことを考えて、おいしい牛乳が出るようにしたい」
「良い餌をあげる」
 等の「気をつけている点」が出され、
「毎日、牛の体調に気をつけて世話をしているよ。残さず飲んでくれたら嬉しいな」
 という酪農家の「願い」が出されました。

次に、牛乳工場の人の場合は、
「ばい菌が入らないように」
「安全に届けたい」
 等の「気をつけている点」。そして、
「牛乳を安心して皆に飲んでもらえるように、検査に合格した牛乳だけを製品にしているんだ」
 という牛乳工場の人の「思い」が出されました。

運ぶ人の場合は、
「たくさんの人が飲んでくれますように」
「無事に届けたい」
 等が出されたので、
「さっき、タンクローリーの中の温度は5℃だと言いました。今日のような暖かい日は少しでも早く、しかも安全に届けないといけませんね。先生が聞いたら『早く安全に、しかも温度管理にも気をつけている』とおっしゃっていました」
 と説明を加えました。

「たくさんの人の○○○がこめられている」と板書にまとめる

「たくさんの人の○○○がこめられている」と板書にまとめる

最後に、
「私たちが飲んでいる牛乳には、こんなにたくさんの人の思いが込められているのですね。先生はこう思います」
 と言って、黒板に「○○○」と書きます。
「○○○と3 文字あります。どんな言葉が入ると思いますか?」
 子どもたちからは、「おもい」「きもち」「ねがい」「こころ」という言葉が出ました。
「先生が○○○としているのは、答えは一つではないと思っているからです。皆さんが牛乳に関わるたくさんの人の気持ちや思い、願いを受け止め、牛乳1本の中にこうした色々な人の気持ちが込められていることをわかってもらえたらいいなと思います」
 と話して授業を終えました。
授業の展開例
  • おいしくて安全な牛乳が消費者の食卓に届くまで、その品質管理には細心の注意が払われています。どのようなことが行われているか調べてみましょう。
  • 牛乳と同じように、米が給食や食卓に届くまでを調べてみましょう。
関連情報
【本授業を動画で見られます】
「牛乳がみんなの元に届くまで」授業プラン

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文・監修:藤本勇二/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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