2014.04.15
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草摘みに行こう! 【食と暮らし】[小2・生活科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第九十二回目の単元は「草摘みに行こう!」です。

君がため 春の野に出でて 若菜摘む我が衣手に 雪は降りつつ

光孝天皇

百人一首の中で、私が一番好きな歌です。2年生の子どもたちと畑に七草摘みに行った時、この歌を口にしながら草を摘みました。
栽培活動のため、学校近くの休耕田を借りて学校菜園にしています。夏の時期の生い茂る雑草との戦いは壮絶です。収穫の喜びの裏には、常に草取りの苦労があります。しかし、一言で「雑草」と片付けてしまいがちな野の草たちも、よくよく見てみると、おいしく食べられる草のなんと多いこと! そこで、2年生の子どもたちと野草を摘んで、調理・加工した活動をご紹介します。

入学してきた1年生と一緒によもぎ団子を作る

4月、国語の学習で『かくれんぼ』(東京書籍 国語2年上)という物語を読みました。その中にケガをした主人公が「よもぎ」をもんで傷に当てる所があります。そこで、
「よもぎを明日持って来てね」
 と言うと、二人の男子が翌日、ビニール袋いっぱいのよもぎを持って来てくれました。皆で匂いを嗅いだり、色や形を観察したり、実際にもんでみたりしました。

ちょうど、入学したばかりの1年生に学校案内を計画していた2年生。せっかくなので、皆で学校菜園に行ってよもぎを見つけ、家庭科室でよもぎ団子を一緒に作ることにしました。

よもぎ団子の作り方(4人グループ分)

【よもぎ団子の材料】
・白玉粉:100 g
・よもぎ:20 g
・水:50 cc程度

【白玉団子の材料】
・白玉粉:100 g
・水:100 g程度

【手順】
(1) よもぎはゆでて水気を取り、細かく刻む(ミルサーを使用)。
(2) 白玉粉によもぎを混ぜ、少しずつ水を入れながら耳たぶの固さになるようにこねる(白玉団子も同様)。
(3) 適当な大きさに丸めてゆで、浮き上がったら水に取る。
(4) 適量のきな粉をかけて出来上がり。
皆でよもぎ団子を試食

皆でよもぎ団子を試食

<児童の感想文より(原文ママ)>
「よもぎだんごをつくったとき、よもぎをとったときははながキーとするくらいきついにおいだったけど、ゆでるとあまいにおいになってびっくりしました」

<学級通信より>
「先週の金曜日に1年生と一緒に作ったよもぎ団子は、よもぎのほのかな苦みがあり、食べられるか心配していましたが、自分たちで作ったものは、格別なのでしょうか、ぺろりと食べてしまいました」

カイコと一緒にクワの葉を食べる

柔らかいクワの葉を蒸した後、乾燥

柔らかいクワの葉を蒸した後、乾燥

6月、カイコの飼育をしていた子どもたちは、カイコの資料を調べている時、クワの葉が自分たちにも食べられることを発見しました。そこで、柔らかい葉を収穫して蒸した後、ザルに並べて乾燥し、クワの葉パウダーにしてケーキを作ることにしました。また、乾燥させた葉の一部は乾煎りにして、クワ茶にして飲んでみました。

クワクワケーキの作り方

【材料(パウンドケーキ型1個分)】
・ホットケーキミックス:80 g
・薄力粉:80 g
・砂糖:50 g
・卵:2個
・サラダ油:80 cc
・クワの粉:大さじ3杯

【手順】
(1) 乾燥したクワの葉をミルサーで粉にする。
(2) 材料を全部ボウルに入れ混ぜる。
(3) 分量外のサラダ油を塗ったケーキ型に(2)を流し込み、180度のオーブンで50分焼く。

<児童の感想文より(原文ママ)>
「クワクワケーキは、まっちゃケーキの色とにおいがしました。カイコがたべるクワをにんげんもおいしくたべれることがわかりました」

クワ茶は代用茶として昔から飲まれていて、最近では健康茶としても人気が高まっています。ほんのりと甘く、柔らかい味で、子どもたちはおいしそうに飲んでいました。

ピザのトッピングは七草

七草のうち、せり・なずな・すずしろ・はこべらを収穫

七草のうち、せり・なずな・すずしろ・はこべらを収穫

3学期初日、1年生と一緒に七草ピザを作りました。

七草のうち、せり・なずな・すずしろ・はこべらを収穫
七草のうち、せり・なずな・すずしろ・はこべらを収穫
まず、昼休みに大根畑へ行って七草摘みをしました。真っ先に見つけられたのは、もちろん自分たちが育てている大根「すずしろ」です。柔らかそうな葉を数枚摘み取りました。

次に見つけたのはひよこ草「はこべら」。ひよこ草と呼んで、よくニワトリにあげていた草が七草だったことに驚いていました。学校菜園には以前からせりがたくさん自生していたのをチェックしていたので、せりは実物を見せて、一緒に探しました。
「先生、これはせり?」
「あっ! ここにせりがあった!」
 と、ほとんどの子どもがせりを見つけることができました。

ピザ生地に刻んだ七草とチーズをトッピング

ピザ生地に刻んだ七草とチーズをトッピング

少し見つけるのに手こずったのが、「なずな」。別名ペンペン草と呼ばれ、実が三味線のバチに似ているので、その姿を見れば子どもたちにも見つけられるのですが……。1月初旬、まだ畑の土の低いところでロゼット状になっているのです。しかし、畑をよく見回すと、所々にすでに花を咲かせ、実をつけ始めた株がありました。
「ぺんぺん草発見!」
 無事、なずなも収穫することができました。
七草ピザの出来上がり!

七草ピザの出来上がり!

残念ながら「ごぎょう」「ほとけのざ」は見つからず、「すずな(カブ)」も育てていなかったので、正確には四草ピザになってしまいましたが、家庭科室でピザ生地を丸く伸ばしした上にピザソースを塗り、刻んだ七草とチーズをトッピングしてオーブンで焼き、七草ピザをいただきました。
「ピザは、あんまり好きじゃない……」
 と言っていた数名もペロッ。自分たちで摘んだ春の七草の味は格別でした。
授業の展開例
  • タケノコ、ワラビ、フキ、ウドなどの山菜を使った郷土料理について調べてみましょう。
  • 食べられる身近な野の草や実を調べ、実際に調理して味わってみましょう。(今までに調理したものでは、ドクダミ茶・スベリヒユのお浸し・イタドリの炒め物・クワやコウゾの葉の天ぷらなどがおすすめです)

汲田 喜代子(くみた きよこ)

高知県いの町立川内(かわうち)小学校 教諭

「カイコをそだてよう」では、桑茶や桑ケーキを作り、育てたカイコが作った繭から糸を採り織物に。「ピザのたねをまこう」では、小麦、タマネギ、ニンニク、トマトを育てピザやスパゲティー作りに挑戦。「ふくじんづけパーティーをひらこう」ではナタ豆を育て、塩漬けにした他の野菜と一緒に福神漬を作るなど、「どきどき」「わくわく」がいっぱいの食農教育に取り組んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・汲田喜代子/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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