2014.10.14
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

意外と知らない"日本の教科書制度"(vol.3)

日本の教科書制度とは何か? その目的や流れ、仕組み等を詳しく解説するシリーズ。ラストは、教科書採択制について詳しく見ていきたいと思います。

教育委員会はどのように教科書を選定しているのか

最終回は、日本の教科書採択について、もう少し詳しく解説します。

小学校と中学校の教科書は、通常4年に一度改訂されます。下図にあるように、2014年現在、小学校で使用されている教科書は、2008年告示の学習指導要領に基づいて著作・編集され、2009年度に国の検定を受け、2010年8月末までに各地域の教育委員会・国立大学の採択を受けて、2011年度から使用されているもので、今年度がその最後の使用年度になります。

来年(2015年度)から使用する教科書は、2013年度に検定合格したものの中から、今年度採択され、決定します。

公立の小・中学校で使用する教科書の採択権限は、その学校を設置する市町村や都道府県の教育委員会にあります(国・私立学校では、学校長に権限があります)。

始めに、都道府県教育委員会の主導で、単独あるいは複数の市町村教育委員会をグループ化した共同採択地区を決定します。共同採択地区内では、共通の教科書を使うことが義務付けられます。

次に、地区ごとに学識経験者、保護者代表、青少年団体関係者、学校関係者(校長・教員)、教育委員会事務局職員等で構成される採択地区協議会を設置し、協議会から委嘱された調査員(校長、教員、指導主事等)の報告書や、各学校からの希望票の集計値等も参考にしながら、地区で採択する教科書を決定します。

教科書採択のメリットや課題

2014年4月現在、日本全国に580の採択地区があります。比較的大きな自治体単独で構成されている地区が半数弱あり、それ以外は複数の市町村で一つの地区を構成する共同採択地区となっており、1地区は平均して3市町村程度で構成されています。

この共同採択方式では、過去に沖縄・八重山地区の中学校教科書採択問題等が起きており、地区内で意見の相違があった場合等の課題も指摘されています。
(詳しくは、本コーナーの下記記事をご参照ください)
「教科書の採択権は誰にあるのか ~沖縄・八重山地区教科書問題をめぐって」(2012年1月25日記事)
「教科書改革実行プランで何が『改革』されるか」(2014年1月8日記事)

一方、共同採択方式には小規模市町村でも「教科書の調査研究を十分に行う体制を整えられる」、「近隣市町村内での転出入の際の児童生徒の負担が少ない」、「教師が近隣他校と共同で授業研究を行い、授業の質を高めるのに役立つ」等の利点を挙げる声もあります。

現在、採択地区のグループ決定においても、市町村合併等を見越して、より柔軟に地区割りを見直すことができるようになりつつあります。

その地域で育つ子どもたちが、地元に愛着と誇りを持って勉強できるように、地域の自然環境や、歴史的な成り立ち、文化的背景や産業構造等、それぞれの持つ特性とよりマッチした教科書が選べることは、日本の教科書採択制の良い点ではないでしょうか。

誰でも最新版の教科書を見られる

豊かな国づくりのために、次の時代を担う子どもたちの育成は、とても大切なことです。各国の教育施策は、その国が将来、どうなっていきたいかを表しているとも言えます。

ですから、子どもたちのアイデンティティ形成に大きな影響のある初等教育期に、どんな教育を受けさせるか、そのためにどのくらいのお金をかけるか、どんな教材を使うのかということに、我々はもっと関心を持ってもよいのではないでしょうか。

毎年6月~7月にかけて全国各地の教科書センターや学校、公立図書館で教科書展示会が開かれます。ここでは誰でも、前年の検定に合格した教科書の見本を見ることができます。地域により明治後期から現代の教科書見本を年代別に展示するコーナーを設けている所もあるそうです。

また、8割近くの自治体で意見箱を設置する等、学校現場や保護者の希望・意見を集めています。小中学生のお子さんをお持ちの保護者の皆さんも、機会があれば、お近くの展示会に足を運んでみてはいかがですか。

≪おわり≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop