「ニーズに応じた支援」はすべての子どもに有効
 東京都立港養護学校 川上康則教諭(特別支援教育コーディネーター)
特別支援教育では、一人ひとりの教育ニーズに応じた指導や、その子のための個別教育支援計画に基づいて、小中高校さらには学校卒業後まで含めた一貫した支援の継続を目指しています。学校だけでなく、福祉や医療、学童保育など子どもに関わるさまざまな人たちが連携した取り組みになるため、現場の先生方には発想の転換が求められるかもしれません。
こうしたなかで私たち特別支援教育コーディネーターが果たす役割は、子どもへの指導法から校内の組織づくりまで、学校での取り組み全般について外部からアドバイスやサポートをすることです。特別支援教育に対する現場の関心は高く、私も地域の学校の研修会に招かれ、先生方とお話をする機会が増えてきました。
養護学校の子どもたちは、地域で生活しているという実感を持ちにくいものです。本校の学区は近隣の4つの区に広がっていて、多くはスクールバスで通学していますから、地域の皆さんも身近なところに養護学校の子どもがいることに気づきにくい。本校に通う子も、それぞれの地域で生まれ育ち、将来も地域の一員として暮らしていくのですから、早い段階から、地域社会の人々や同年代の子どもたちと関わっておくことが大切です。私が地域の学校の先生方と交流し養護学校の子どもの様子を伝えることは、本校にもメリットがあるのです。互いにギブアンドテイクの関係ですから、学校の先生方も気兼ねせず、私たちのようなスタッフをどんどん活用していただきたいと思っています。
 川上教諭の教室
研修では、その学校が抱えている課題に即したトピックを選ぶようにしていますが、どの学校でも共通してお話する話題もあります。 まず、子どもの学校での様子を記録する際、人によって受け止め方の違う言葉や、判断基準のあいまいな言葉は使わないようにすること。また、複数のエピソードをまとめて書かないようにとアドバイスしています。たとえばその子の様子を、「集団行動ができない」と大ざっぱに捉えてしまうと、40人学級での行動に問題があるのか、班別活動がうまくできないのかがわからず、適切な支援ができません。どんな状況で、何ができて何ができないかを具体的に見ることが大切です。
 一日のスケジュールを示した黒板
次に、因果関係を決めつけないことです。「この子は片親だから」「共働きだから」「親の愛情が足りないから」といった憶測に過ぎない捉え方をやめ、子どもの現状を冷静に見つめる必要があります。
3つめとして、特別支援教育という概念を広く捉えてもらうようにお願いしています。特別支援教育は「LD、ADHD、高機能自閉症」といった診断名のついた子どもだけを対象にしているイメージがあるかもしれませんが、決してそんなことはありません。「一人ひとりのニーズに応じた支援」はすべての子どもに有効なことですから、診断名の有無に関わらず、すぐれた教育ツールやノウハウは積極的に使っていきましょうと提案しています。
子ども目線の疑似体験で発達障害を理解する
個別のニーズに応じた指導を実現するための第一歩は、その子の持っている特性や、学校生活で直面している困難と、その要因を正しく理解することです。
 上図:「ココロ」という文字が書いてあるが、背景と読み取るべき文字の境界があいまいなため読みにくい。下図:発達障害の子どもに配慮した教室の掲示物づくりでは、余分な周辺情報をカットして見やすくすることが大切
たとえばLDのなかでも計算の苦手な子には、筆算の位取りができないケースがよく見られます。これは計算力の不足ではなく空間認知の問題で、2つの数の足し算なら、「上の数の1の位と下の数の1の位を足したものが、答えの1の位に入る」という空間の位置関係がうまく捉えられないのです。こうした子どものつまづきが理解できないと、計算ドリルを繰り返しやらせるといった指導をしてしまいがちです。当然、これは子どもにとって苦痛ですし、失敗体験を重ねることで自己評価を下げ、学習への意欲を失わせることにもつながります。
空間認知に問題のある子どもは、ものにつまずきやすく、平均台がうまく渡れないといった特徴があるので、こうした様子から発達障害の存在に気づくこともあります。学校のさまざまな活動のなかで子どもたちが見せる「サイン」を的確に読み取る力をつけることが大切だと思います。
そこで私は、各校で行う研修のなかに、発達障害のある子どもの感覚を疑似体験する試みを取り入れています。たとえば右図は、子どもの「ものの見え方」をイメージしてもらう素材です。初めは混乱しますが、見方がわかると隠れている文字が見えてくるはずです。背景をカットして文字だけを取り出すと、誰でもはっきりと読むことができますね。発達障害のある子どもは、全体像のなかから読み取るべき情報をうまく引き出す力が弱いのですが、余分な情報を取り除くことでこれを補ってあげることができるのです。
「すっきり感」が学びやすい教室づくりの基本
こうした手法は、学習環境づくりにも応用できます。私が各校でおすすめしているのは、教室をすっきりさせ、子どもが落ち着いて学習に集中できる環境をつくることです。部屋が散らかっていると、好きなように散らかして構わないのだと誤学習してしまう心配もあるので、「すっきり感」を大切にした教室づくりを心がけてほしいと思います。
 大田区内のある区立小学校の教室。机の周辺から掲示物まで、ものを減らしてすっきりさせることが落ち着いた学習空間づくりにつながる
左の写真は、大田区立小学校の4年生の教室です。このクラスにはADHDとアスペルガー症候群(言葉の発達の遅れをともなわない高機能自閉症)の子どもが在籍しており、こうした発達障害に配慮した教室づくりが実践されています。 特に見てほしいのは、子どもの机のフックに道具袋などを下げていないことです。ここにものがたくさんぶら下がっていると歩くとき邪魔になりますし、気が散る要因にもなる。落ちたものを拾うためには席を立たなければなりませんから、離席をしやすい子どもがわざとものを落として、授業中に席を離れる口実にすることもあるのです。掲示物は必要最小限に絞って丁寧に貼ってありますし、カーテンも風で揺れないように止めてあります。余計な情報やものをカットして「すっきり感」を演出するお手本と言えます。
 教室後方には、次にやるべきワークが丁寧に並べてある。決められたものを決められた場所にきちんと置くという教室づくりが徹底されている
また、椅子や机の脚に使い古したテニスボールをつけるのも手軽で効果のある方法です。聴覚刺激に敏感に反応する子どもは多いので、余計な音が出ないようにするだけでも、子どもが集中しやすい環境をつくることができます。
子どもの机をコの字型の配置するメリットは、先生が動きやすく、先生に対して最前列に位置する子どもを増やせることです。逆に、子ども同士が向きあう形になるので、窓の外に気を取られたり、友だちの動きに目が行ってしまうというデメリットもあります。このクラスの場合は、アスペルガーの子は黒板に一番近い位置に、ADHDの子は先生の真正面に置いていました。席替えは子どもの自由にさせず、先生が指定しているそうです。
じっとしているのが苦手なADHDの子を教室前方に置くと、その子の動きに後方の子どもたちが注目してしまうのですが、こういう座席設定にすれば、先生がその子を常時チェックできるうえ、仮に動いても多くの子どもの視界に入らずに済む。よく考えられた配置だと思います。
「見えないもの」を視覚化して伝える工夫
 「話声の大きさ」といった目に見えないものも、具体的な指標を使って視覚的に示すことで子どもたちにわかりやすく伝えることができる
子どもたちを適切に支援していくうえでは、「見えないものを視覚的に示す」ことがひとつのポイントになります。
たとえば現在でも多くの学校で「声のものさし」の掲示物を見かけますが、大抵は教室の高い位置に貼ってあるだけで使われていません。ある小学校の先生はこれを黒板に貼って、矢印をつけて授業で活用しています。班別で活動する際は「ボリューム3(班のなかで)」で話し合おう、でも3分経ったら席に戻って「ボリューム0(心のなかで)」になろうねと掲示物を示しながら伝える。「静かにしなさい!」と大声を出すより、こうして行動の目標を視覚的に見せながら押さえたトーンで話したほうが子どもは指示を聞きやすいものです。
 友だちと自分の会話や、相手の気持ちを言葉に表して考えさせる。相手の感情を読み取るのが苦手な子どもに対しての有効な支援になる
また、子どもの「心のなか」を視覚的に示すことも有効な支援になり得ます。自閉傾向のある子どもの多くは、話し相手の表情や言葉の抑揚から感情を読み取るのが苦手です。このため、場違いな発言をしたり、対人関係でトラブルを起こしたりしやすい。こうしたときには、その子と相手の子が口にした言葉を文字にして示し、「あの子はこう言ったけど、心のなかではこう思っていたのかもしれないね」と、相手の感情や思いも書いて見せ、自分の発言を落ち着いて振り返る機会をつくってあげるといいでしょう。
 子どもたちの行動の背景にはさまざまな要素が隠れている。たんなる「問題行動」として片づけず、子どもなりの理由を探ることが大切
もちろん子どもたちは、何かわからないことがあっても、「私にはわからないので視覚的に提示してください」とは言いません。代わりに、指示に従わなかったり、どこかへ行ってしまったり、かんしゃくを爆発させたりします。こうした行動は必ずしもわがままから出るものではなく、「わからないよ」という子どもたちからのサインなのです。表面に現れる問題行動は言わば氷山の一角で、水面下には行動につながるさまざまな要因があり、それを生み出している周囲の環境や社会的な背景が隠れている。この関係を、特別支援教育に携わる多くの先生方に知っていただきたいと思います。
特別支援教育の推進は学級経営の改善に
 その時間の授業の流れを大まかに示すだけでも、子どもが見通しを持つ足がかりになる。落ち着いて学習に集中させるうえで効果的な取り組みだ
日常的にできる支援のひとつとして、その日のスケジュールやその時間の授業内容をあらかじめ示し、子どもたちに活動の見通しを持たせることも挙げられます。
子どもが周囲の状況を見通しを持って見る習慣は、生後6、7カ月頃から始まるとされています。一番身近なのは「いないいない、ばあ」です。乳幼児はこれを繰り返し見ているうちに、「いないいない」と言われた段階で、「次の『ばあ』で顔が出てきそうだ」と見通しを持つようになるのです。1歳前後を対象にした絵本は、これと同じ展開になっていますね。最初に「いないいない」があって、次のページの「ばあ」で何かが現れるという構成です。もう少し年齢が上がると、『大きなカブ』や『ノンタン ぶらんこのせて』のように、「いないいない」が繰り返されて登場人物が増えていき、最後の「ばあ」で終わるといったお話になります。
3歳くらいになると、『ぐりとぐら』のように複数の出来事が因果関係でつながっているストーリー性のある絵本が読めるようになるのですが、この段階でつまづくと、「見通しの持ちにくさ」が上の年齢まで残ってしまうと考えられています。
小学校に入ると1週間の時間割に沿って学校生活を送ることになりますが、1週間の組み立て以前に、45分間の授業の見通しが持てない子は割と多いのです。活動の見通しが立てられない不安感から離席をしてしまうADHDの子もいるので、この時間はこういうことを勉強しますという流れを事前に示してあげることは、子どもたちを落ち着かせるうえでも効果的です。
上で紹介したような支援の手法や効果は、必ずしも特別支援教育の枠内に限定されるものではありません。多くの現場を見て実感するのですが、支援の必要性の高い子どもを手厚くフォローすることは、必要性の比較的低い子どもたちや、発達障害のない子どもたちにも好影響を与え、学級経営そのものの改善につながります。こうした考え方はいまは一般的ではありませんが、今後、特別支援教育をすべての学校現場へ定着させていくうえでは、有効なアプローチになるのではないかと考えています。
医師の診断・障害の特定を急がないこと
 都立港養護学校小学部の作品
特別支援教育はまだスタートしたばかりですから、戸惑いや不安を感じている先生方も多いのが現状です。こうした点も含めた今後の課題をいくつか指摘しておきたいと思います。
ひとつめは、校内の推進体制の確立と管理職の理解です。多くの学校現場に共通しているのは、特別支援教育コーディネーターが生き生きと活動できる背景に必ず、校長先生の理解とリーダーシップがあることです。特別な支援を必要とする子どもたちを引き上げることが、子どもの力だけでなく学校の教育力の底上げにもつながると考える校長先生がいると、コーディネーターも自分の仕事にやりがいを感じて活発に動くことができるものです。逆に管理職の理解のない学校では、せっかくすぐれた実践をしている先生がいても、そこで培ったノウハウが校内レベルですら共有されないという状況が生まれています。この点については、学校経営の観点から特別支援教育の価値に目を向けてもらうために、私たちも積極的に情報発信していきたいと考えています。
 都立港養護学校高等部の作品
ふたつめは、対象となる子どもたちをどう捉えるかという点です。発達障害の存在は学校現場でも注目を集めているだけに、ともすれば「LD、ADHD、高機能自閉症」といった「診断名」が一人歩きしてしまいがちですが、こうした傾向は特別支援教育を推進するうえでは必ずしもプラスにはならないでしょう。
LD、ADHD、高機能自閉症などの発達障害には、医学上の判断基準があります。しかし医師の所見に左右される部分も大きく、ある病院でLDと診断された子どもが、数年後に別の病院でADHDと診断されるといったケースはよくありますし、複数の発達障害が合併している事例も多く見られます。より重要なのは、仮に診断名が確定しても、現場の先生や保護者がやるべき支援の方向性は変わらないという点です。「この子はADHDかもしれないので診断を受けてほしい」と要望することで、逆に保護者とトラブルになってしまうこともあるので、個人的には、障害種別の特定にはこだわらないほうがよいのではないかと考えています。
課題を抱えこまず外部の支援を活用して
 都立港養護学校卒業生の作品
発達障害や特別支援教育に対する保護者や社会の理解を深めることも大きな課題と言えます。「障害」をその子の特性の一部として冷静に受け止めてもらうためには、「その障害のことをみんなが知っている」「マイナスイメージがないか、わずかである」「障害を補う手段が確立されている」という3つの条件が必要だと思います。これらが揃っていない段階で「この子はLDという発達障害で」と説明することは、保護者にショックを与えるだけでなくトラブルの元にもなります。特別な事情がない限りは、「こういう状況で落ち着かなくなるようです」とその子の特性を伝える程度に留めておくほうがよいと思います。
こうした事情をある専門家は、「近眼とメガネ」の例で説明しています。近眼という「障害」の存在は誰もが知っていますが、マイナスイメージはほとんどありません。それはメガネやコンタクトレンズという「障害を補う手段」が確立しているからです。
現在のところ、「発達障害と特別支援教育」は、「近眼とメガネ」ほど一般には受け入れられていません。上の3つの条件に当てはめると、「その障害のことをみんなが知っている」という状況をつくっている段階なのです。特別支援教育は、一人ひとりの子どもを大切にする教育活動であり、特定の子だけでなくクラスみんなが落ち着いて学べる環境をつくる取り組みなのだということを広く理解してもらうためにも、地道な情報発信に努めていかなければなりません。
現場の先生方の多くは、「教員になったらその日から一人前のプロである」と大学で教えられてきたはずです。しかし始まったばかりの特別支援教育には、「一人前のプロ」などいません。その子の特徴や対応の方法がわからないときには、「助けてほしい」と声を上げていいのです。その求めに応じて、私たちコーディネーターや外部の専門家が先生方をサポートするしくみが用意されていることも、新しい特別支援教育の柱のひとつなのですから。課題をひとりで抱えこまず、外部の人材や情報、ノウハウを積極的に活用しながら、子どもの「サイン」を読み取る力を高めること。そうした先生方一人ひとりの取り組みが、特別支援教育の土台をつくっていくのだと思います。 |
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コメント(5)
特別支援教育の体制作りは非常に重要になってきているが、その為の予算措置は、わずかしかなされていない。人も物も金もない中で、教員が身と心を削って対応している現状も、レポートして欲しい。
義務教育を終了した子供はどこにゆけば「特別支援教育」の恩恵を受けることができるのでしょうか。
「義務教育」前後の特別支援教育について補足説明します。
学校教育法の一部改正により、高等学校や幼稚園においても「特別支援教育」が法的に初めて位置づけられました。
高等学校での取り組みですが、たとえば、東京都教育委員会では、「高等学校における特別支援教育」というリーフレットを作成しています。その中には、「特別支援教育は、すべての高等学校が緊急に取り組むねき課題です」という一文が記されています。
また、文部科学省では、今年度のモデル事業として、全国の国公私立の高等学校より14校を指定して、「高等学校における発達障害支援モデル事業」を展開しています。
ただ、学校卒業後の社会での認知度は、現在のところほとんどない、というのが現実だと思います。家庭で、勤務先で、地域社会で理解を得られず悩み苦しんでいる方も多いと思います。
社会全体が「恩恵」に近いような形に成熟するまで、私たちも地道に努力していきたいと思います。
相談する場所がないのでご相談させて頂きます。ADHD,LD,自閉症等の発達障害、学習障害に関するレポートが多いのですが肢体不自由児の教育を教えて下さい。現在の小学校でT.Tをしております。初めてではありません。その学校には特別支援学級があり教員、コーディネーターもいますが支援を拒否し全てを通級で通常の児童と同じことをさせる場合どうすればよいのでしょうか?歩行器、車椅子使用で介助員をつけずにいる為(就学前に学校はやってくれるのかという保護者の希望に当時の担当者がやりますから大丈夫。ということで入学してきたそうです)T.Tが介助員の代わりを全てしていますが担任が困ったらT.Tは呼ばれ介助に入ることも珍しくありません。当然授業は思うように進みません。皆待ちに入りずっと我慢しながら待っていますがあまりにも時間がありすぎて1年時にクラス崩壊、今、2年時必死で建て直しを計りますが両者の関係は距離が離れるばかり。集団で行動するものは(体育、生活、図工、給食その他)ほとんど無理で座っているだけでも手で作業するものは握力が殆どないので日々大変になってきています。授業の建て直しを担任とT.T(私)でやっているので算数などは何とか少しづつよくなってきてはいますが現実的に行き詰まっています。支援の教員はいつでもと言ってくれ準備はていますが支援拒否の為支援に入れません。度々担任も、支援の教諭もT.Tも管理職の先生方に相談をしましたが保護者と管理職、養護教諭の関与はなく続行させるということで期待できないのが現状です。T.Tはそのため週22時間(多いですが)の教科担当のうち半分の11時間を特別支援?の介助員をしているためつきっきりになってしまうため他の児童の質問や相手はできなくなり1年生のときとは違い成長してきた子供達も少しづつ我慢の理由とその限界を理解し始め、「えこひいき」「いいなぁ、○○君だけ先生に見てもらえて」「ダメだよ、○○君がいるから僕達のところには来てくれない」等々の声が出てしまい、そのつど子供達には言い聞かせてはいますが先々大丈夫だろうかと心配です。T.Tをずっとやっていますが今回の学校では「先生にはまず介助員をやってもらいます」と言われ驚きましたが何分初めてのことでしたので困惑するだけでした。知識も技術もなく大変な1学期でしたが日々身体が成長するその児童自身(保護者)もT.Tが全てをやってくれるという前提で学校へ来ているため自らすることはなく、どんどん身体は硬くなり重くなっていくため私自身も教員の仕事どころではなく疲労困憊。児童も自身の身体とこれから先付き合っていかねばならないという事からまたクラスの今の状態を考えてもよくない環境かなと思うのですが、学校側と保護者間では先に記しましたとおりなのでどうしてよいかわかりません。いろいろわからないことばかりなのでたくさん質問したいことがあります。毎年繰り返しこのままでよいのかと。掲載して欲しくて書いているのでは在りません。むしろ逆です。特別支援とは?必要な児童にはどのように?正直学校側の受け入れ体制が整っていないのに学校がやります。大丈夫ですよといってしまい、また管理職が理解と知識が乏しく積極的に動かない場合現場の教員は大変ですが学級経営上担任は全体を見ることに専念すると私のような立場の弱い末端にいるT.Tは自信喪失と共に教育に対しての熱意さえ失ってしまいます。考え方やみ方をを変えたり出来るだけ前進するよう試行してますがたった一人で頑張るには負荷を軽くするにはつらいです。クラスの他の児童にもその児童にも(保護者)担任にもT.Tにもこれからの人たちにもよりよくなる方法はないのだろうかと思案中です。相談するところがありませんので宜しくお願い致します。
>サルビアさん
とても苦しい状況にいらっしゃるのだろうなと推察いたします。TTの教員として、本来業務とは少し離れた仕事に携わることになっただけでなく、校内でのお立場もなかなか理解されにくいのではないでしょうか。ご相談できるところがないという事情もよくわかります。
さて、こちらからの回答をお示しする前に、1つだけおことわりしなければならないことがあります。それは、より具体的な解決策をご提示するには情報が少なすぎるということです。少なくとも、@その子自身の状況や教育上必要なことの把握、A家庭環境(家族構成から、どのような教育方針をもっていらっしゃるかにいたるまで)、Bクラス環境(担任の先生の授業の進め方から、友だち関係にいたるまで)、C学校環境(管理職の先生方の意向から、特別支援学級の構成メンバー、特別支援教育の坑内員会のメンバー、歩行器等の使用に関係する施設設備の充足度などにいたるまで)、D社会環境(地域の状況、支援できる団体の有無から、関係する諸機関との連携の状態にいたるまで)などを総合的に評価・判断しなければなりません。現時点での安易な回答は、曖昧な解決策の提示にとどまるだけでなく、かえって問題を悪化させかねません。
ただ、そうは言っても、サルビアさんとしては、クラスのお友達も含めてみんなが幸せに向かう方向をなんとか模索していらっしゃると思うので、お伝えいただいた情報の範囲で可能なかぎりのことをこちらもお示ししたいと思います。回りくどくないよう説明すると、最終的に参考にしていただけるかどうかはサルビアさんに判断をゆだねたい、ということになります。
かなりこじれた状況のようですので、一気に解決を急ごうとするのではなく、以下の手順を踏まれることをご提案したいと思います。
(1)まず、その子自身と、保護者の方のご意見を全部聞くというスタンスでサルビアさんと担任の先生を交えた4者で面談を行ってください。個別面談という形だと保護者も構えてしまうので、あくまでも気軽に。帰りがけにちょっと立ち話的な雰囲気が理想的です。学校での現状を話す必要はありません。昨年度との違いに一番とまどっているのは本人と保護者なので、どのあたりが昨年度と違うのか、私たち教員に何を期待されるかだけを聞きとってください。絶対に「あなたがいなければ良いクラスなのに」的な雰囲気を醸し出さないでください。「あなたあっての、このクラス」というスタンスを貫いてください。たとえ保護者と担任で意見が食い違ったとしても、「味方である」という意識を持って、それを伝えてください。何ができるかとか、どこが一番ふさわしいのかを議論するのは、その次の段階です。一度では全部思いを伝えきれないという気持ちを保護者ももっていると思うので、何回かに分けてでもしっかり話を聞いてあげてください。
(2)全部話を聞き終える頃に、校内のコーディネーターと相談して、「支援会議」を開きたいと保護者に提案してください。本人や保護者の関係者が一堂に会する会議で、本人をサポートするための会議です。特別支援学校では、すでに一般的な会議になっています。コーディネーターの先生には、お近くの特別支援学校のコーディネーターに支援会議の有効性などについて確認していただくことをお勧めします。ここには、まだ管理職を呼ばないほうがよいと思います。「味方」としてコーディネーターが一人加わるという印象がないとそこから先に進みません。
(3)支援会議では、もう一度、本人、保護者の意向を伺います。また、担任の先生やコーディネーターの先生の意向も率直にお話していただいてよいと思います。支援会議の記録を必ず書面で残しておきましょう。あくまでも本人が伸びゆくことを前提にした話しあいを関係者全員が心にとどめること、そして、最終判断は、できれば本人、できなければ保護者が決めること。校内の特別支援学級を見学してみたいという話になったり、そちらの先生もまじえたお話がしたいということになったりしたら、次の機会に参加してもらうこと。きっとよい本人、保護者を囲んだ「よい関係」が築けます。
(4)現在の状況にこだわりが強い場合は、他の選択肢を検討していないか、他の選択肢に対する拒否感をお持ちの場合が多いです。サルビアさんも、現在の環境では伸びない、他の特別な場所なら伸びる、といった一元論ではなく、今の環境で伸びゆくとしたら、この部分は貢献できる、でも、別の部分は、他の環境のほうがしっかりできる、という発想に切り替えられるとよいと思います。教員と保護者が思っている価値観は、違っていて当然。重視するところも別なのかもしれませんから、互いの立場と優先順位を整理していくことが必要です。
(5)本人、保護者、担任、サルビアさん、コーディネーター、特別支援学級の担任、の6名(場合によっては養護教諭が協力的な方であることも多いので、できれば含めて7名)の意見がある程度まとまることを目指します。みんなの思いをぶつける必要はありません。最終的に判断するのは家庭であること、どんな判断でも味方でいること、でも意見は参考にしてほしい、というスタンスがよいかと思います。
(6)支援会議がうまくいきそうなら、管理職に少しずつ情報を流しましょう。サルビアさんのお話の中で一番変わらなそうなのは管理職ではないかと思います。こちらが少しずつ話を進めていく過程を報告しつつ、文部科学省から出された「特別支援教育の推進について(通知)」という文書を必ず読んでもらってください。これは文部科学省が全国の教育委員会教育長や知事に向けて通知した拘束力の強い文書で、「校長の責務」がしっかり書かれています。必要部分のみ転載しますが、全文は、http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htmをご参照ください。
校長の責務
校長(園長を含む。以下同じ。)は、特別支援教育実施の責任者として、自らが特別支援教育や障害に関する認識を深めるとともに、リーダーシップを発揮しつつ、次に述べる体制の整備等(筆者注:6つの項目があります)を行い、組織として十分に機能するよう教職員を指導することが重要である。
また、校長は、特別支援教育に関する学校経営が特別な支援を必要とする幼児児童生徒の将来に大きな影響を及ぼすことを深く自覚し、常に認識を新たにして取り組んでいくことが重要である。
(7)最後に、支援会議に管理職の先生方も参加していただきます。特別支援教育は、障害のある子を特別な場に集めようとする教育ではありません。その子が必要とする教育的な手立てを、最大限に発揮するにはどのようにしたらよいかを最優先に尊重するという考え方だと思います。そういう発想に全員が(保護者も、管理職も)たった上での支援会議を設けて、支援プランを作ります。大げさなものでなく、みんなで合意したものをまとめるという形でよいと思います。
(8)支援会議は、ここで終わりではありません。支援プランの有効期限を設けて、次はいつ開催するかを会議の終わりに決めましょう。たとえば半年後、学年末などがよいと思います。次の担任に経緯をしっかりと引き継ぐことが目的ですが、もしかしたら、ご家庭でも教育方針を変更する場合があるかもしれません。そうなってはじめて、特別支援学級や特別支援学校の可能性も視野に入れればよいのではないでしょうか。
デリケートな問題であることは重々承知の上で、自分なりのプランを提示させていただきました。最初に述べたように、私が直接係わっている事例でない分、的外れなことを言っている可能性もあります。どうか、サルビアさんのお悩みがゆっくりではあっても着実に解消されることを願っています。ありがとうございました。