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「ICTで学力向上」を証明。教育の情報化加速なるか!?〜ICTを活用した教育効果の検証結果の報告〜

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取材ルポ

「ICTで学力向上」を証明。教育の情報化加速なるか!?
 〜ICTを活用した教育効果の検証結果の報告〜

NIME

 平成19年1月27日、東京国際交流館プラザ平成国際交流会議場にて、文部科学省委託事業成果発表フォーラム〜ICTを活用した教育効果の検証結果の報告〜が開催された。全国から約650名の参加者が詰めかけ、メイン会場は満席。サブ会場も開放しての盛況ぶりとなった。

 研究の背景

嶋貫和男
挨拶に立つ文部科学省初等中等教育局参事官の嶋貫和男氏

「2005年までに全国のすべての学校にコンピュータを整備し、インターネットにアクセスできる環境を実現する」の掛け声のもと推進されている教育の情報化。平成18年3月31日現在、校内LAN整備率の全国平均は約50%、コンピュータを使って指導できる教員の割合は約77%(教育情報化推進協議会調べ)。未だ目標達成には届かない。また、地域によって差も大きい。

 今後も教育の情報化を進めていくためには、ICT整備のための予算化が必要であり、予算化のためには、明確な動機づけが必要となる。「ICTを活用した授業が学力向上に寄与する」ことを証明できれば大きなインパクトとなるのではないか。

 そこで、独立行政法人メディア教育開発センター(NIME)は文部科学省の委託を受け、平成17年度よりわが国初の試みとして、ICT活用による学力向上を客観的に証明するための研究、「ICTを活用した指導の効果等の調査」を、実施している。

 今回のフォーラムは、昨年(平成18年3月)に行われた第一回目の報告に続く第二回目。(第一回のようすは、学びの場.comで紹介

 明らかに学力は向上


 今回の実験に参加した授業者数は320人、対象となった児童生徒は、小学校5,665人、中学校3,018人、高校2,594人の合計11,277人である。

 今回は中間報告であり、正確な数値は本発表(4月の予定)を待たねばならないが、授業後に行った客観テストによると、ICT使用により明らかに学力向上が認められ、また児童・生徒の学習意欲、興味、関心の向上も証明された。

 ICT利用について、授業のどの段階でどのように使うかは、各教員にゆだねられている。もっともよく使われたICT機器のベスト3は、パソコン(122件)、プロジェクタ(90件)、インターネット(66件)で、以下、電子情報ボード(32件)、デジタルカメラ(21件)、実物投影機(17件)と続く。

 利用シーンとしては、導入での利用(50件)、導入+展開+まとめ(40件)が双璧。

 昨年度の調査との違い

 


 昨年度の発表では、学力向上の測定について、ICTを使った場合と使わなかった場合の2種類の授業を行った後、評価テストを行うという方法だったが、授業者や生徒などが異なる状況で正確なデータが得られるのかが問題になった。今回は、それを踏まえて、複数の学校で同じ指導計画で実施し平均を取る、などの方法により、できるだけ客観的なデータの収集を目指したところが昨年と大きく異なる点だという。

 また、前回の発表では、9割の教員が「ICTによって学力向上した」と答えたが、もともとPCの利用に長けた教員が被験者となったからではないか、という指摘があった。そこで、今回は、教員のPC活用歴差による比較も行った。結果的には両者に有意差はなかったという。

 調査方法



 具体的な調査方法は、調査対象となる単元を指定し、ICTを使った場合と使わなかった場合の授業を行う。その後、共通の客観テスト(ペーパーテスト)と、児童生徒の意識調査を実施して、知識理解、興味・関心・態度の向上が見られたかどうかを検証する。

 各校の発表から


 参加校のうち、小学校14校、中学校5校、高校6校の合計25校が実践を発表した。実践報告の中で、客観テストと意識調査の結果がグラフで提示され、各学校とも、「ICT活用あり」の場合で著しい向上が示されていた。また、いずれの発表でも児童・生徒から「ICTを使った授業は楽しい」という声が挙がっていることは注目に値する。

 以下に、発表の中からいくつか印象に残ったコメントを紹介する。

 


NIME

ICT

ICTで学力向上
客観的データで学力向上を証明する

 宮城県仙台市立東二番丁小学校の菅原弘一教諭は、4年生の社会科で「地図ソフト」を使用。「平面地図、衛星写真、3D地図、断面図などを瞬時に切り替えられるため、実際の地形と地図とのイメージを結びつけることが容易になった」

 宮崎県三股町立勝岡小学校の渡邉光浩教諭は、3年生算数の「表とグラフ」の単元でプロジェクタ、実物投影機、デジタル教材ソフト、教科書のスキャン画像などを使用。「模造紙で授業の準備をすれば90分かかるが、デジタル教材の利用で短縮できる。また、グラフの描き方をビジュアルで示すことができ、児童の理解力が高まった」

 群馬県渋川市立小野上小学校の上原永護教諭は、5年生算数の単元「平行四辺形と三角形の面積」で自作のデジタル教科書を利用。「図形を頭の中でイメージするだけでは理解しにくい。また、紙を切る作業も手間がかかる。デジタル教材なら自由に図形を動かしたり何度も試行錯誤ができ理解が深まる」

デジタル教科書
 

 子どもたちからも、「図形を動かしたりできるから分かりやすい」「すぐにぱぱっとできて、教科書のどこをやっているかすぐ分かる」「電子情報ボードを使ってペンで描くと楽しい」などの感想があったという。

 東京都私立帝京高等学校の三輪清隆教諭は、2年の数学でグラフ描画ソフトGRAPESを使用。「微分係数では図の板書に時間がかかるが、グラフ描画ソフトで瞬時に作画でき、説明に時間をかけられるようになった。また、生徒も板書の転記に追われることがなくなった」

 和歌山大学教育学部附属小学校の宇田智津教諭からは、2年生算数の「かけ算」で、過去の算数成績から児童を上中下の3グループに分けて比較したところ、「ICTなしとありでは、知識理解・表現処理の項目で、成績の低いグループのほうに、より顕著な向上が見られた」と興味深い発表があった。

 
グラフ
スーパーに出かけ、陳列された商品で、掛け算に表せるものを見つけてデジタルカメラに撮るという活動を行った。ICTのありなしで、成績の下位層の子どもの表現処理力の向上が著しい。
 

 熊本県錦町立一武小学校の横山誠二教諭は体育の授業でPDAやPC、デジタルカメラを使用。児童がハードル走をするところを撮影し、フォームの改善点をタブレットPCに書き込んで説明。ICTを活用することによって記録の向上につながった。

 山形県米沢市立南原中学校の金隆子教諭は、書写で、実物投影機とプロジェクタを使用。生徒の集中も高まり、ICTなしの時よりも技術は向上。「水黒板と違い、消えないので確認しながら書けた。友達の作品も大きく見ることができ刺激になった」「スクリーンが大きくて身易いし筆使いもよくわかりやすかった」など生徒の評価も高かった。

   宮城県栗原私立大岡小学校の成瀬啓教諭の「児童から『考えるときには黒板がいい』という感想があった。ICTは利用のタイミングや見せ方によって児童の考える力を削ぐこともある。より効果的な使い方をする必要がある」という発表はすべての教員が留意すべきところであろう。

 パネルディスカッション

 

上記の発表をうけて、小泉 力一氏(尚美学園大学芸術情報学部 教授)、堀田 龍也氏(独立行政法人メディア教育開発センター研究開発部 助教授)、山本 朋弘氏(熊本県立教育センター 指導主事)、横山 隆光氏(羽島市立羽島中学校 校長)が登壇しパネルディスカッションが行われた。

「ICT活用は、プロジェクタなどを使った“提示”が多かったが、効果的に提示するには、長時間ずっと提示するのではなく、見せるタイミング、時間(量)、提示方法がポイントとなる。」(横山氏)

「ICT活用により、学力向上だけでなく、教員の負担の軽減、より面白くて楽しい授業がやりやすくなった、という効果も無視できない」(小泉氏)

「技能・表現など、ICTを使っても効果が認められなかった項目について、その原因の究明が必要」(山本氏)

「事例を多数集めることによって、教科、校種を超えた典型的なICT有効利用の方法が見えるのでは」(堀田氏)

などの意見が示された。

パネルディスカッション

 今後はICT利用の普及フェーズに

清水 康敬
独立行政法人メディア教育開発センター 理事長
清水 康敬氏

 独立行政法人メディア教育開発センター 理事長の清水 康敬氏は、
「2年間の実験を終え、いい活用事例がたくさん集まった。今後は、これらの実践を広く普及させていく段階につなげたい。実践事例をデータベース化してより多くの教員が利用できるようにするほか、教員の研修、ICT活用指導力のチェックリスト作成なども行っていきたい」と新たな方向性を提示。

 文部科学省初等中等教育局参事官の嶋貫和男氏は、「昨年に比べ、狙いが絞られ手法にも工夫が見られてきたのでは」と今回の成果を評価。「この結果を日本の教育を変えるために活用し、ぜひとも学力向上につなげたい」と締めくくった。

 今回の発表を通して感じたのは、ICT利用は特別なことではなくなりつつある、ということ。参加教員たちも習熟度も上がり、よりよい利用場面、よりICT利用の適する単元はどこか、目利きできるところも出てきたのではないだろうか。

 欧米諸国や韓国など近隣のアジア諸国からも大きく遅れをとっている日本の教育の情報化。「学力向上の証明」が、加速のきっかけとなるか。今後に期待!


以下、高篠栄子の勝手なオススメ&つぶやきコーナーです!

おススメ本〜今月読んだ本の中からおススメ本をご紹介!

ベルマークのひみつ

高井 ジロル (著)
価格: ¥ 1,050 (税込)
単行本: 175ページ
出版社: 日本文芸社 (2006/06)



ベルマークのひみつ

 子どもの頃に誰でも一度は集めたことのあるベルマーク。PTAで集めたことがある人も多いのでは? あのちっちゃなベルマークをはさみで切り取り台紙に貼る。超アナログな作業はなかなか大変だが、真剣に集めれば、すべり台などの遊具、朝礼で使われる講演台、デジタル顕微鏡などの教具、などなど、かなり高額なものも手に入るのだ!(内田洋行のものも結構あります!)。

 そもそもベルマーク運動が始まったのは、へき地の学校環境をよくしてほしいという陳情書がきっかけ。ベルマーク集めは、わが子の学校のみならず、へき地学校の環境充実にも貢献できるのだ。本書では、そんなベルマークの、知っているようで知らなかったひみつを明らかにしていく。読後、猛烈にベルマークを集めたくなった私です。


気になるイベント報告!
1月27日に、KIUインターネット教育研究フォーラムに参加した。KIUとは特定非営利団体柏インターネットユニオンのこと。KIUを中心とした産官学連携の支援により、柏市は学校情報化の先進地域となっている。しかし、環境は整ったが、セキュリティの問題、教員のICTによる指導力の問題、情報モラル教育の問題など、柏市にもまだまだ課題はあるようだ。今回のフォーラムでは、米国のCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)事情が紹介されたが、ICT環境については専門家であるCIOに任せ、教員は授業内容の充実のみに時間を割くことができるのが理想なのかも。今年10年目を迎えるKIU。今後は柏市のCIO的な存在になっていくのかも知れない。

今月のつぶやき

うちの次男が今年で保育園を卒園。卒園式で、保護者が現代版桃太郎という寸劇をやるのだが(私は桃太郎役)、桃太郎が、いじめや学級崩壊で荒れる鬼が島小学校を見て他の学校に越境入学しようとするのを、サル、イヌ、キジに諭されて、学校改革に乗り出す、という話。もちろん笑える劇になるはずだけど、あまりにも生々しすぎる!? 学校って辛いこともあるかも知れないけど楽しいこともいっぱいだよ!がんばって行こう!! という前向きなメッセージが伝わればいいのですが…。


20072006 |
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