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学びの場 特別支援に関する指導スキルを高めるためには、どんな点に気をつければいいのでしょうか。
R教諭 「この子にはこの手立て」というHow to的な知識も必要ですが、それ以上に、その子のつまずきの根本を見定める力をつけることが大事です。 たとえば、発達障害を持つ子の多くは「自分に対するアンテナ」が敏感ではありません。自分の言葉や行動が他人にどう受け取られたか、自分が他人からどう見られているか、想像するのが苦手なんです。
Uさん うちの子もそうです。本人はよかれと思って言っていることが、友だちを傷つけていると気づかないんですよね。
R教諭 それが対人関係のトラブルといったつまずきとして現れてくるんです。そういう子には、「いまあなたの言ったことは、友だちからこう思われているよ」と“翻訳”してあげて、周囲から見られている自分を少しずつ意識させてあげることが重要です。
G教諭 イラストや掲示物を示しながら話すのも有効です。うちの学校では各教室に、声の大きさをイラストで表現した「声のものさし」や、やさしい言葉遣いの具体例などを掲示して、子どもに指示を出すときに活用してもらっています。
J教諭 「声のものさし」を低学年から使っている子どもたちは、「いまはボリューム1だよ」と話すと、「ああそうだった」と反応はするようになってきました。子どもに浸透して身につくには何年もかかるでしょうから、継続的な指導が必要ですね。
G教諭 そういう意味では、1、2年生のときの関わり方によって、6年間を落ち着いて過ごせるかどうかが決まると言ってもいいんです。学習のルール、学習道具の使い方や片づけ方、掃除の仕方など、学校生活のきまりを指示して聞いてくれるのは低学年のうちだけですから、この時期にきちんと身につけさせることが大事です。

R教諭 子どもが落ち着ける環境づくりにも気を配ってほしいですね。教室のものを整頓するとか、掲示物をきれいに並べて貼るとか、ちょっとした工夫で子どもの気が散る要因を減らすことができます。
J教諭 机や椅子の脚に使い古しのテニスボールをつけて、雑音が出ないようにするのも一つのアイデアですね。
R教諭 逆に、A小学校のようなオープンルーム構造は、聴覚的な刺激に反応して注意を削がれやすい子には、集中を保ちにくい環境です。
G教諭 そうなんです。メリットもありますが、特別支援という観点ではかなり弊害を感じます。
Uさん いまお話にあった子どもと上手に関わるスキルは、先生だけでなく保護者にも役立ちますよね。でも保護者向けの情報は少ないし、学ぶ機会も限られています。
G教諭 その点は学校もお手伝いしていく必要があるでしょうね。以前、保護者会でR先生に子育てのヒントを話していただいたことがあって、すごく好評だったんです。それだけ、お子さんとの関わり方で悩んでいる親御さんは多いのでしょう。
Uさん 困ったときにアドバイスしてくれる相手のいない親御さんは、特につらいと思いますよ。発達障害に対する誤解も多いですから、周囲からいろいろなことを言われて、親のほうも参ってしまう。
G教諭 確かに親御さんのケアはほとんどなされていませんね。相談機関も病院も、診察は3カ月待ち、人気のところは1年待ちなど、いずれも満杯状態で、困ったときにすぐ頼れるわけではないですし。
R教諭 今年度から実施の「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」では、全国のモデル地域で特別支援教育の課題を検討し、成果を全国に広げていく計画です。発達障害に関する情報センターをつくる計画もあるので、保護者への情報提供も今後は充実していくのではないかと思います。
ただ、特別支援教育を巡る環境がいかに改善しても、保護者と担任の先生が子どものことをわかってあげて、一緒に関わっていくことがもっとも重要であることは変わりません。子どもが一番長く過ごす場所は家庭と通常学級であり、そこで一緒にいる大人は保護者と担任の先生ですからね。

特別支援教育の本来の目的は、先生の負担軽減だとR教諭は言う。だが、それがすべての学校で理解されるには、「あと10年はかかるでしょう」と。A小学校は、本来の目的に近づきつつある。一方、校内委員会もコーディネーターも名ばかりで、学級担任が矢面に立たされ苦心している学校は、ますます遠ざかりつつある。最初の一歩を踏み出すのは、やはり管理職であり、コーディネーターなのだと思う。
取材・文:栗林俊晴 ※写真の無断使用を禁じます。
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